着物を着よう

春佳「――…マジで…?」



紗央璃からの話を聞き、唖然とする春佳。「此処は忍たま世界」と聞き、驚かないわけがない。ただでさえ、異世界に来てしまった事に驚くのに、それに忍たま世界が加わる。
驚きで「えー…?」と混乱する春佳。目はあちらこちらに行き、更に混乱する。



大暉「とりあえず俺は2人の着物買いに行ってくるから、留守番頼むな」
よしき「僕も!!僕も行きたい!!」
大暉「よし、一緒に行くか」
よしき「うん!!」



大暉の腰に抱きつくよしき。短時間ですっかり懐いてしまったようだ。春佳はその事に内心驚きつつも、大暉に声をかける。




春佳「すみません、お願いします」
大暉「うん、色は何が良い?」
春佳「あ…、じゃあ緑系で」
大暉「おけおけ。紗央璃は紫系で良いよな?」
紗央璃「オッス」




紗央璃の返事に頷き、大暉とよしきは「行ってきます」と言って家を出て行った。残された紗央璃と春佳。2人は未だ、この世界について整理がついていない。




春佳「……それにしても、黒さんのお兄さんってしっかりしてるね」
紗央璃「そうかァ?……あれ、会うの初めてだっけ?」
春佳「ううん。直接話したことないだけ」
紗央璃「ああ、そっかそっか」




紗央璃はそう言い、背伸びをする。空を見ると、既に暗く、夜となっていた。




春佳「まさか忍たまの世界に来ちゃったなんてねぇ……」
紗央璃「驚きですね。でも、忍たまキャラに会わなければ関わることは無いし」
春佳「しばらくはこの生活に慣れる事で精一杯だろうね」
紗央璃「あー…、働かんと……」
春佳「うん……」




春佳の言葉を最後に、家の中は静かになる。こうもやる事が無いとなると、ジッとしているしか無くなってくる。



春佳「しりとりしよう」
紗央璃「え」



いきなりの提案に、紗央璃は無表情ながらも驚く。でも、暇なものは暇だ。紗央璃は寝転び「ソッチからどうぞ」と言った。




春佳「雲雀恭弥」
紗央璃「やー…、野菜」
春佳「磯野波平」
紗央璃「インチキ」
春佳「鬼太郎」
紗央璃「海」
春佳「ミミロル」
紗央璃「ちょ、あの、さっきから何でアニメキャラを選択してるわけ?」




思わずツッコむ紗央璃。春佳は「えへへ」と照れ笑いをする。




春佳「なんかアニメキャラしか出なくて」
紗央璃「なんだソレ、一種の才能か?」
春佳「そ、そんな、黒さん…!!才能だなんて…///」
紗央璃「褒めてねぇよ」




春佳のボケに、紗央璃のツッコミは冷めていく。しりとりでアニメキャラしか出ない才能なんて、なんの役にも立たない。立つとすれば、友人とのしりとりだけだろう。




「ただいまー」
「ただいまっ!!」




どうやら大暉とよしきが帰ってきたようだ。紗央璃と春佳は2人へと視線を向けながら「おかえりなさーい」と言った。大暉の手には、2つの布袋。1つを紗央璃に、もう1つを春佳に手渡す。



大暉「その中に着物が入ってるから、奥の部屋で着替えきな」
紗央璃「うい。金ちゃん、行こう」
春佳「うんっ」



立ち上がる紗央璃に続き、春佳も立ち上がる。そして、2人で奥の部屋へと向かった。奥の部屋には戸がついている為、着替えを覗かれることは無い。奥の部屋に着いた2人は、それぞれの布袋を開けた。




紗央璃「あれ?あれれ?」
春佳「ん?黒さん、どした?」
紗央璃「私の、着物じゃなくて袴だ」
春佳「え」




春佳が紗央璃の手元を覗くと、確かに着物ではなく男性用の袴があった。上の着物は薄い藤色、袴は濃い黒紫。紗央璃のイメージカラーにピッタリだ。



紗央璃「金ちゃんのは?」
春佳「私のは黄緑色の着物。あ、帯が赤だ!可愛い!」
紗央璃「おお、金ちゃんに似合いそうだな」



春佳の着物は黄緑色。裾の部分は黄色い模様がある。帯は赤色。落ち着いた女性に似合うような可愛らしい着物だ。早速、2人共着てみる。




春佳「ん?帯ってどうやるの?」
紗央璃「結ぶだけで良いと思うよ」
春佳「ほうほう」
紗央璃「くっ…、袴の帯結びづらいな……」




四苦八苦しながらも、なんとか着る2人。少しいびつではあるが、それは段々と慣れて行くしかない。



春佳「うっわ、黒さん袴似合いすぎ」
紗央璃「金ちゃんだって似合ってんじゃん」



お互いの着物姿を見て、それぞれ感想を言う。現代人の2人であったが、着物もしっかり着こなせており、この世界でもやっていけそうだ。




(後はこの先の生活をどうするか)


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