誘われました

ずっと願っていたのだ。大好きな人達が居る世界へ行きたい、と。行きたい世界は目移りしたが、何年もこの世界から抜け出したいと願ったのだ。



春佳「……何処だココ」
紗央璃「……多分、森で御座る」



2人は今まで一緒に遊んでいた。カラオケに行って、アニメイトに行って。疲れる程に遊び騒ぎ、空が茜色に染まる頃帰ろうとした。だがその時、何処からか眩い程の光が視界を遮った。当然眩しく、咄嗟にギュッと力強く目を瞑る2人。その眩しさが消えて目を開けた瞬間、2人の目の前にはいくつもの木が覆い茂っていたのだ。



紗央璃「あ、ピーンと来た」
春佳「ん?」
紗央璃「これさ、トリップじゃない?」
春佳「……え、マジ?」



顎に手を当て、眉間に皺を寄せる紗央璃。それに対し、口をポカンと開けて目を点にする春佳。



春佳「……なるほど…、トリップだったら今の状況も頷けるよね」
紗央璃「だろ?」
春佳「じゃあ、どこの世界に来たんだろ?」
紗央璃「あー…、森の中じゃ分かんないな……」



紗央璃はそう言って立ち上がり、辺りを見渡す。森の中は薄暗く、遠くの方まで木が育っている。現在地からでは森の出口は全く見えない。



紗央璃「とりあえず、そこら辺歩いてみっか?」
春佳「うん、だね」



紗央璃の言葉に頷き、春佳も立ち上がる。辺りを見渡しながら宛ても無く歩き始める。




紗央璃「これで熊とか出てきたら完璧死ぬな、私等」
春佳「っは!?ちょ、やめてよ恐い!!」
紗央璃「熊が出てきたら金ちゃん置いてでも逃げさせてもらうわ」
春佳「裏切り者ォ!!人でなしィ!!」
紗央璃「はっはっはっ、何とでも言いなさいな」




疲れを紛らわすように、会話をしながら歩く。それでも、疲れは増す一方。遊び疲れた2人に、限界が近づいていた。



春佳「……キツい…」
紗央璃「……休憩しよっか」



弱々しく、その場に座る2人。木を背もたれにし、溜め息をつく。ただ宛ても無く歩き続け、それでも森の出口が見えない。




紗央璃「……金ちゃん、眠いなら寝てな。何かあったら起こすから」
春佳「……でも…、黒さん、が……」
紗央璃「今にも寝ちゃいそうな奴が何言ってんの。大丈夫だから」
春佳「……う、ん……」




頭を揺らし今にも寝てしまいそうな春佳。そんな春佳を気遣い、紗央璃が声をかける。最初こそ拒否をしていた春佳であったが、限界が来たのか目を瞑って寝てしまった。しばらく経ち、春佳が微かにいびきを立て始める。



紗央璃「…………どうしよ……」



眠気を堪えながら、考えを巡らせる。まずは森を抜け出さなければならない。それから状況を把握する為、賑やかな場所へ行く。必ず何処かに街のような場所があるはずだ。そこに行けば、どのような世界かある程度分かるだろう。




「早く早く!!こっちから変な感じがするの!!」
「ちょ、ま、待てって…!!」




兄弟だろうか。何処からか大声を出して騒ぐ声が聞こえる。物凄く眠い今では、その騒ぎ声が頭を痛くさせる。



紗央璃「(…もう、限界かも……)」



紗央璃は、頭痛がするのを感じながら目を閉じた。自然と眉間に皺が寄っているのを感じる。




(おやすみ、なさい…)


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