05



「――数馬って、最近なんだか楽しそうだな」
「え、そう?」



今日は珍しく僕、藤内、孫兵、作兵衛、左門、三之助の六人が揃って食堂で昼餉を食べている。いつものように食事をしていたつもりが、孫兵にそう言われ、隣にいる藤内には「ずっとにやけてるぞ」と言われてしまった。慌てて箸を置き、頬に手を当てる。確かに、頬は通常よりもわずかに上がっている。



「不運な数馬、良いことあったのか?」
「ちょ、作兵衛、不運は余計!」



ニヤニヤと聞いてくる作兵衛の言葉に、僕は苦笑しながらそう言う。良いこと、と言われても思いつくものがない。けれど、最近変わったことならある。六角弥兵衛さんと出会い、あれ以来弥兵衛さんがよく僕を訪れることだ。もしかしたら、そのことかも?



「別に、いつも通りだよ」



弥兵衛さんは一応敵側だし、皆には話さない方が良いだろう。僕の言葉を聞き、藤内達は納得しなったけれど「ふーん」と言って、再び目の前の昼餉を始めた。その様子を見て、僕も自分の昼餉を食べ始める。



「あ、皆これから用事あるか?」



会話が終了したと思ったら、三之助が急にそんなことを聞いた。僕以外の皆は次々と「用事がない」と言う。



「僕もないよ」



最後に、僕がそう言う。僕達がこれから用事が無いということを知ると、三之助は少し笑みを浮かべながら、



「じゃあ、これから町に行かないか?」



と聞いてきた。確かに、最近はみんな委員会や予習や鍛練で忙しく、揃って出かけることはなかった。息抜きにみんな一緒に出掛けるのも楽しそう。



「良いね、それ。僕三之助の意見に賛成」



ニコニコと笑みを浮かべながら、三之助の言葉に頷く。すると、三之助は嬉しそうに「だろ?」と笑う。すると、左門が「僕も賛成!!」と笑いながら言った。



「団子屋に寄って、そこら辺歩きたいな!!」



左門の言葉に、みんな頷く。ということは、みんな出かけられるようだ。どんな店を回りたいか楽しそうに喋っている左門達の言葉を聞きながら、御飯を一口食べる。自然に緩む頬を感じながら「今日は楽しめそうだな」と思い、僕も左門達の会話に参加した。




 ***




燃え盛る城を遠くで見ながら、俺は瞼を閉じる。
相手の軍の名前は弱小が故に忘れた。此度の戦、籠城を決め込んでいた相手の隙をついて城に火矢を放ち、城を燃やした。少量ではなく多量であった為か、火はどんどん広がり、城の中に籠っていた奴等は城から出られず、もがき苦しみながら焼け死ぬことだろう。



『雑渡、鼠が何匹か逃げたみてぇですね』
「おや、お気づきでしたか。流石は弥兵衛殿」



俺の後ろに控えている雑渡に声をかける。雑渡は俺の言葉に淡々と答え、俺の隣へと来た。俺よりも身長の高い雑渡を見上げるが、雑渡はいまだに燃えている城を見たまま。



「町の方向に三匹、忍が逃げました。どうしますか?」
『……俺が行きますよ。調度物足りなかったところなんで』



そう言い、俺は手に持っている槍を肩に担ぎ、歩き始める。雑渡は俺の言葉を聞き、「分かりました」と、それだけ言う。見透かしたような言動取りやがって……。だからあの包帯野郎は好かないんだ。……とっとと殺して来るか。



この時、雑渡が密かに俺の後を付けているだなんて、俺は知らなかった。


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