22


……終わった。
周りには、血を流しながら倒れている男達。どれも息はしていない。10人以上いた男達相手に戦った沖田さんと私。息を整えつつ、視線だけで沖田さんを探す。だが、見つけた沖田さんは力無く横たわっていた。「沖田さん!!?」と名前を呼びながらも慌てて駆け寄り、息をしているか確認する。良かった、まだ大丈夫だ。だが、息が浅い。



「沖田さん、私のこと分かりますか?」
「……ッ寧ちゃん……?」



虚ろな目でありながらも、私のことを見ている沖田さんに少しホッとする。沖田さんの体からは、大量に血が流れている。布で抑えて止めようとするが、布はすぐに赤黒くなってしまう。



「も、いいよ……」
「喋らないでくださいっ……!!」
「今まで、あり、がとッ……」
「そんなッ……、沖田さん……!! 沖田さん……!!」



目を瞑ったまま、動かなくなってしまった。沖田さんの口元に耳を近づけても、息をしている音がしない。心臓も、動いていない。目が滲み、涙が溢れ出てくる。袖で拭いても拭いても、涙は止まってはくれない。ずっと見てきた愛する人が亡くなり、心にポッカリ穴が開いた感覚がする。小さく嗚咽を漏らしていると、沖田さんの体が灰になっていくのに気づいた。



「沖田さん……?」



その時、ビュウッ、と風が強く吹いた。次の瞬間、灰となってしまった沖田さんの体は、風と共に何処かへ行ってしまった。止める間も無く、むなしくそれを見つめる。残ったのは、地面に刺さった沖田さんの刀。



「寧……」
「寧さん……?」



突然聞こえた声に、私は声のした方を見る。そこには、傷を負っている副長と千鶴が居た。私は慌てて、袖で涙を拭く。そして立ち上がり、副長の目を見る。



「新選組一番組組長沖田総司は、自分の使命を全うし、潔く死んでいきました」
「……そうか……」
「そんな……、沖田さんが……」



私の言葉に、副長に唇を噛み締め、千鶴は胸元の着物を掴んだ。まだ流れてくる涙を余所に、私は刺さったままの沖田さんの刀を抜く。そして、その近くに落ちている沖田さんの鞘に、刀をしまった。ボロボロな刀を見つめ、私は沖田さんの最期を思い出す。



「寧、」



名前を呼ばれ、副長へと視線を向ける。



「――萩野寧、お前を新選組から解雇する」



その言葉に、私は目を丸くする。私を、解雇……? 私は、そんなに役立たずだったのだろうか。



「嫌……、嫌です……。私は、新選組の一員です……!!」
「もう、無理しなくて良いんだ」
「無理なんかしてません!! 私は、最後まで皆さんと戦います!!」



悲痛な声だろうがなんだろうが、私は気にせずそう言った。すると、副長は悲しく微笑んだ。何故そんな表情をするのか分からなくて、何も言えなくなってしまう。



「お前には、総司の小姓で居てほしいんだ。お前の隣には総司、総司の隣にはお前。ずっと、そのままで居てほしいんだよ、俺ァ」
「……副長……」
「だから、総司の為にも平和に暮らしてくれ。もう、戦になんざ出るな」



そう言い、副長は私に背中を向けて歩いて行く。それを見た千鶴は、私に頭を下げた後、副長を追いかけた。ああ、流れる涙が止まらない。どうすれば止まるのかも分からない。新選組として過ごせた日々は、私にとってとても大切な思い出となった。



「……お世話に……、お世話になりましたッ!!!!!」



去りゆく副長と千鶴の背中に、私は大声でそう言った。



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