第65話


「滝ー、お邪魔するよー」



四年生と一番仲が良いということで、お気楽な感じで部屋に入る。ハイヒールを履き慣れていない為、歩きにくいが頑張る。部屋の中に入ると、四年生が揃っていた。私の格好に、四年生達は珍しく目を輝かせた。



「小雪、凄く似合ってる!!」
「お綺麗です!!」
「ふふ、ありがとう」



義理の弟達の言葉に少しニヤけてしまう。すると、タカ丸が「僕の前に座ってください」とにこやかに言った。タカ丸の側には櫛やら簪やらが置いてある。どうやら髪を結ってくれるようだ。私は「宜しくお願いします」と言いながら、タカ丸に背中を向けて座る。タカ丸は「任せてください」と言い、私の髪の毛を触った。



「…………よし、完成でーすっ!!」
「え、早いな」



滝夜叉丸に鏡を渡され、自分の髪型を見てみる。今の私の髪型は、お嬢様結びで簪をさされており、毛先が少しウェーブがかっている。お上品な感じに仕上がっており、少し恥ずかしい。



「次は五年生の久々知兵助先輩と尾浜勘右衛門先輩の部屋です」
「小雪、頑張ってね」
「応援してますから!!」
「お、おう……?」



何のことか分からないが、とりあえず返事はしておく。そして、滝の言われた通り久々知の部屋に行くため、滝達に「じゃあね」と別れを告げて部屋を出た。




 ***




久々知の部屋に来た。「失礼するよ」と言って部屋を開けると、ハチを除いた五年生達が居た。ハチは何処に行ってしまったのだろうか。「あれ、ハチは?」と素直な気持ちで久々知達に聞くと、久々知達は私を見るだけで何も話さない。その頬はなんとなく赤い。まさか、見惚れてる、わけじゃないよね……?



「おーい?」
「……っあ、えっと、ハチは用事があるみたいで」
「へえ、そうなんだ」
「は、はい」



用事があるなら居なくても仕方ないよな。不破の返事に納得していると、鉢屋が「どうぞ」と何かを渡してきた。それは透明なカーテンのような何かだ。広げてみると、カーテンではなく、ウエディングドレスのヴェールだということが分かった。どうやら、付けろ、ということらしい。大人しくヴェールを頭に付ける。傾いていないと良いんだけど。



「次は六年生です」
「潮江文次郎先輩達の部屋に行ってください」
「はいよ」



次は六年生で、潮江達の部屋に行かなければならないのか。久々知と尾浜の言葉に返事をし、私は久々知の部屋を出た。次はなんだろうか。




 ***




「お邪魔しまーす」



少し勢いよく潮江の部屋の障子を開ける。潮江の部屋の中には六年生達の姿。六年生達も五年生達同様、私の格好を見て固まった。頬はわずかに赤い。だが、一番早くに我に返った立花が「此方へどうぞ」と手招きをした。私はそれに従い、立花の元へ歩み寄る。



「今から化粧をしますね」
「お願いします」



軽く頭を下げ、立花と向き合う形で座る。「目を瞑ってください」という言葉に、私は従って目を瞑る。すると、顔全体に何かを塗られていく感触がする。次に、目と口に何かを塗られた。何かといっても、化粧なのだけれど。しばらくして「目を開けてください」という立花の言葉に、目を開けた。



「さ、化粧は終わりました。鏡をどうぞ」
「ありがとう」



手渡された鏡で、自分の顔を見る。思わず「っ……」と息を呑む。そこには、自分の顔と思えない程見違えた綺麗な顔がうつっていたのだ。化粧は現代とこの時代を合わせたような化粧を塗り方だ。凄い、こんなに変わるなんて思わなかった。



「へぇ、見違えたなーっ!!」
「コラ小平太、失礼だろう」
「いや、私も七松と同じことを思ってた」
「ちょ、ちょっと小雪さん……」



正直に言うと、善法寺に苦笑されてしまった。でも、本当にそう思ってしまったのだから仕方ない。



「次は、正門の近くにある大きな木へ行ってください」
「え? 部屋じゃないの?」
「あ、少し時間が押してるかもしれませんね。さ、早く早く」
「え、えー……?」



私の質問に誰も答える人は居なかった。それどころか食満にはぐらかされてしまい、無理矢理部屋を出されてしまった。部屋を出された私は目をパチパチし、ポツーン、としていた。…………とりあえず目的地に向かうか。

 
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