第63話


気が付けば、周りの敵は倒れていた。ただ残るは、遠呂智のみ。その遠呂智は、いまだ呂布さんと交戦中。両者とも一歩も引かず、五分五分といったところだろうか。ただ、此処に居ても凄まじい殺気と、武器が交わる度にうまれる風が伝わってくる。



「ふんっ!!」
「っはあ!!」



後はもう、呂布さんに任せることしか出来ない。敵がほとんど倒れ、遠呂智が呂布さんと交戦している今、私達は少しでも休養を取っておくべきだ。この後、何が起こるか分からないし。



「お兄ちゃん、皆の傷の手当てお願い」
「ああ、そうだな」



私の言葉に、お兄ちゃんは懐から次々と救急道具を取り出す。何故そんなに懐に入れられたのかは分からないが、今はツッコんでいる場合ではない。「手当てすんぞー!!」というお兄ちゃんの言葉に、皆がお兄ちゃんの元へ集まってくる。だが、一人ではさすがに手当ての対処がしきれない為、手当てをした者から手当ての手伝いをやっていく。



「小雪さん、俺がやりますね」
「ああ、お願い」



一番最初にお兄ちゃんに手当てをして貰ったハチが、私の元へ救急道具を持ってやって来てくれた。ハチの言葉に甘え、傷ができてしまっている右腕を出す。思ったより深い傷で、少し驚いてしまった。



「……大丈夫ですか?」
「うん、結構大丈夫」



心配そうなハチの表情に、私は少し笑う。私の表情を見て安心したのか、ハチは傷に消毒液を塗った。少し痛かったけれど、泣く程じゃない。我慢していると、ハチがガーゼを傷に乗せ、その上から包帯を巻いていく。



「はい、出来ました。後はありますか?」
「ありがとう。他は小さいから大丈夫」



そう言い、私はナタ、呂布さん、遠呂智の三人の激戦を見る。体力の消耗は激しいであろうが、三人はいまだに凄まじい戦いを繰り広げている。と、その時、呂布さんの槍が遠呂智の腹部を貫いた。



――ズブッ
「っが……!!」



勢いよく槍を抜く呂布さん。それと同時に、遠呂智の腹からは血が大量に流れ、崩れ落ちるように倒れた。その光景に視線を向けているものの、誰もが「……」と何も言わないまま、遠呂智の様子をただジッと見ている。遠呂智の腹からは血が流れており、そのままピクリとも動かない。遠呂智は、呂布さんの手によって倒されたのだ。誰もが笑顔を浮かべ、歓声をあげる。



「終わった……?」
「終わりました……、終わりましたよっ、小雪さん……!!」
「や、やったあーっ!!」



ハチとハイタッチをする。私もハチも、それはそれは眩しい笑顔を浮かべている。これで、もう世界が滅ぶことは無い。終わったのだ、何もかも。……何もかも……? 私とハチの関係も、終わるということ……? 考えたくない……。

 
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