第57話
誰かと思ったらナタの登場じゃねぇか!! しかも「勝ったら仲間になる」ってソレ確実に私が死ぬパターンなんですけど!!? よりにもよって私を御指名とか死ぬしかないじゃない!! つーか!! このタイミングで出てくんなよ!!! 探すプチ旅に出て「あ、見つけた」で「俺の仲間になれ」だろうが普通!!! 自ら現れんなよコッチにだって流れがあんだよォォオ!!!!!
「あの人、なんだか弱そうだな」
「変な格好してるけど、あの人相手なら余裕かもね」
いやいやいや!! 全然余裕じゃないから!!! 呂布が戦って負けた相手だよ余裕じゃないよ勝てる見込みないよ!!!!
「
その勝負、受けて立ちましょう!! 僕達の小雪さんが負けるはずありません!!!」
タカ丸くぅぅぅん!!!?
「へえ……、そんなに自信があるんだ」
「え、いや、違っ……!!」
「それは楽しみだ。女の子で強いなんて、凄いんだね」
「や、だから誤解で……!!」
「さあ、始めようか」
「話し聞けよピンク頭ッ!!!!」
駄目だ。まるっきり話が通じない。四年生メンバーはノリノリだし、太公望殿は何も言ってくれないし。こうなったら、この状況を何が何でも抜け出さなければ。私は恐る恐る「あ、あのー、勝負っていってもどういう勝負を?」と聞く。ナタはきょとんとしながら「戦いに決まってるでしょ」と言った。い、いや、あの、
「た、戦いはやめない? 今はあまり体力消耗したくないから」
「それじゃつまらない。血が飛び散ってこその勝負でしょ」
何この子恐ろしいんだけど。やっぱりナタは一筋縄じゃいかないな。こうなったら奥の手を使うしかあるめぇよ。
「じゃあ、こうしない? 私達は三日後、遠呂智軍と戦わなければならない。その戦で、どちらがより多く敵を撃破できたか競うの。あなたと競うかわりに、あなたには私達の味方になってもらう」
「遠呂智と……、ふーん、面白そうだね。分かった、それで良いよ」
「っ本当!!?」
「勿論。君達といると、なんだか楽しそうだし」
そう言うナタの視線の先には、それぞれ笑い楽しみ合っている忍たま達の姿。私は嬉しくて「当たり前です!!」と笑顔で言った。おっしゃぁぁあ!!! ナタGETだぜぇぇえ!!! コレ、ちょ、勝てるんじゃね? もう余裕のよっちゃんじゃーんヤベェ。ふへへ。(気持ち悪いぞ。 by.太公望)
「仲間になったってことで良いの?」
「うん。じゃあ、ナタの事はお兄ちゃんに任せようか。まだ仲間集めしたいし」
「おいで」とナタを呼んで、私はお兄ちゃんの元へと足を進める。ナタは大人しく着いてきてくれる。なんだかヒヨコみたいで可愛い。歩いていると、少し先にお兄ちゃんと六年生達の姿があった。和気あいあいと楽しそうに話している。
「お兄ちゃん、」
「おお、どうし、た……!? ええええ!!! ナタァァアア!!?」
お兄ちゃんは私の後ろに居るナタに気づくと、大声をあげた。その瞬間、思わず顔を顰めて「うるさい」と言ってしまう。そんな私の言葉をスルーし、お兄ちゃんは「え、ちょ、なんでナタが此処に!!?」と驚くお兄ちゃん。だから、うるさいって。
「ナタには仲間になってもらったから」
「え、マジなのソレ?」
「マジだよ」
「ねー?」と首を傾げて聞けば、ナタも「ねー」と首を傾げて同意してくれる。意外とノってくれた。なんだろうな、可愛い性格してる。ナタが仲間になったことを告げても、お兄ちゃんはまだ顔を青ざめている。酒呑童子だって、なんだか戸惑った顔をしている。「なんつーか、小雪って凄いよな」と急に言うお兄ちゃんの表情は、いまだに驚いているが先程よりかは落ち着きを取り戻していた。お兄ちゃんの言葉に「なんで?」と聞く。
「だって、いつの間にかナタを仲間にしてんだからさ」
「いやあ、敵の主戦力を仲間にしようかと」
「まずその発想が凄いんだって!! なんで敵を仲間にしようと思ったんだよ?」
「んー…、敵の主戦力ってさ、必ず遠呂智軍が良いってわけじゃない人もいるじゃん? それなら、何とか言いくるめて私達の味方にした方が戦もすぐに終わるんじゃないかと」
私がそう言うと、お兄ちゃんはポカンとした表情をした。だが、それは一瞬で、次の瞬間にはなんだか泣きそうな顔になっていた。え、なんで。私は訳も分からずお兄ちゃんを見るだけ。お兄ちゃんは、そんな私を見て、私の頭を撫でた。
「軍師じゃねぇんだからさ、お前が考える事じゃねぇんだぞ」
私の身を案じて言っているであろう言葉に、私は内心嬉しくなりつつも、態度には表さない。
「私は皆以上に敵についての知識があるから」
「なら、俺にも手伝わせろ」
「……じゃあ、お兄ちゃんは善法寺と怪我に効く薬作って。死者が出てもおかしくない程の大戦になるはずだから」
お兄ちゃんは私の言葉に「分かった」と返事をした後、酒呑童子と善法寺に「薬草を探しに行くぞ」と声をかけた。私はお兄ちゃん達が行ってしまう前に「ちょい待ち」とストップをかける。
「連れてくならナタの事もお願い」
「え!? 俺達に任せるの!?」
「暴れられたら困るからね」
私の言葉に、お兄ちゃんは青ざめて「マジかよ」と呟いた。でも酒呑童子もいるから大丈夫でしょ。私はちゃんとした返事も聞かずに「じゃ、任せた!」と言ってその場を逃げた。さて、次は卑弥呼を仲間にしなくては。