第56話


光の眩さが消え、目を開ける。そこには、色々な国の建物が混ざった風景が広がっていた。ある所には日本ならではの建物、ある所には中国ならではの建物、ある所にはアメリカならではの建物。――…様々な国の物が混じった世界。此処が、仙界なのか。



「小雪は、此処に来たことがあるの?」
「いや、初めて。私達が太公望殿達と会った場所は、何もない白い空間だったから」



私の言葉に綾ちゃんは「へえ」と少し驚き、辺りをキョロキョロと見渡す。他の皆も、綾ちゃん同様辺りを見渡している。そりゃ、見たこともない物がたくさんあると興味が湧くよな。



「伏犠様達に説明しなければならないので、事が起こる三日前の時間にさせていただきました。それまで、皆様は仙界での生活になります」



かぐやの言葉に、私達は頷く。時間に余裕があるのはありがたい。その時、三蔵様が「はいはーい!! 今から自由行動にしない?」と片手をあげながら提案をした。かぐやは「そうでございますね」と頷き、「説明には時間がかかりますし、自由行動にいたしましょう」とニッコリ笑みを浮かべて言う。



「ですが、あまり遠くには行かないよう、お気を付け下さいませ」
「「「「はーい」」」」



何だコイツ等可愛い。かぐやが保母さんになってる。かぐやは皆の返事に、ふふ、とおかしそうに笑う。そして「では、説明してまいりますね」と言って、私達に背中を向けて行ってしまった。さて、私は…――、



「太公望殿、俺に着いて来な!!」
「貴公は誰だ」



ノリノリで言ったのに、バッサリと冷たく切り捨てられた。無念。私が死んだ暁には太公望殿がヨボヨボになるまで呪ってくれるわ。だが、私が歩き出すと、太公望殿は黙って着いてきてくれた。何コレ嬉しい。さっきの呪う宣言取り消し。前からずっと思ってたけど、太公望殿ってツンデレ属性だよね。



「何処へ行く気だ?」
「あー、どうしよっかなあ。そこら辺にナタとかいねぇかな。上手く言いくるめて仲間にしたいわ」



まあ、私じゃ無理だろうけど。太公望殿が言ったって「怪しい」って言われそうだな、はは。どうしようか困っていると、「あれ、小雪、どっか行くの?」と声を掛けられ、後ろを振り向く。そこには四年生メンバーが居た。今の言葉は声からして綾ちゃんだ。



「ちょっと仲間増やしてくるね」
「かぐやさんが説明に行けば、仲間が増えるんじゃないんですか?」
「そうもいかない人が何人かいてね、説得しに行ってくる」
「き、危険なのでは……!!?」
「大丈夫だよ、滝。なるべく穏やかに説得してみせるから」
「どこからそんなに自身が……」



不安そうな表情の滝達。だが、こればっかりは譲れない。「だーいじょうぶだって。太公望殿もいるし」と言うと、タカ丸は渋々ながらも「分かりました……」と頷いた。他の三人も心配そうな表情をしているが、私は意見を曲げない。勿論、四人が「一緒に行く」と言ったら断るつもりだった。あまり大人数で行っても警戒されるし。



「じゃあ、私行くね」
「……怪我、しないでね」
「お気をつけて!!」
「うん」



心配性だなあ。別に戦いに行くわけじゃないのに。……あれ、でもナタ辺りは「じゃあ、勝負で勝ったら仲間になってあげる」とか言いそうじゃね? そうなったら、オイ、コレ私、死ぬんじゃね?



「――…君が氷室小雪?」



その時、後ろから声が聞こえた。全く気配がしなかった為、私は驚いて、バッ、と後ろを振り向く。



「かぐやの話を盗み聞きしてたんだ。――…君が勝ったら、僕は君の仲間になってあげるよ」



……さ、最悪だァァアア!!!

 
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