第52話


ライブイベントは、順調に行われていった。くのたまの投げキッスにメロメロになった男性もいるだろう。一年生は元気よく、二年生は少し照れ気味に、三年生は左門と三之助が迷いそうになりながらも盛り上がった。そして、四年生はたった今終わり、舞台から降りて来て早々綾ちゃんが私に抱きついてきた。



「小雪、どうだった?」
「みんな可愛かったよ」



私の言葉に、綾ちゃん、三木、滝が複雑な表情をした。男なのに「可愛い」と言われるのが微妙だったのだろう。でも、タカ丸だけはニコニコしながら喜んではいるけれど。四年生のライブは個性的だった。それぞれの歌い方の違いはあったが、それが妙に合っていた。今からは…――五年生。



「「泥まみれの毎日だけど、今更悩んだりはしない♪」」
「「「呆れるほど不器用だけど、心に誓った夢がある♪」」」



始まった。目は自然と、ハチを追いかける。ああ、駄目だ。年上としての余裕を見せたいのに。顔は、次第に熱くなっていく。じっと見ていると、あっという間にサビまで来た。その時、バチッ、と効果音がつきそうなくらい唐突にハチと目が合った。思わず驚いてビクッとしてしまう。



「「「「「果てない空がそこにあるって、今確かな声が聞こえる♪」」」」」



歌いながらも、私にニカッと笑いかけてくれた。その行動だけで、私の顔はぶわっと真っ赤になる。私は耐えられなくなって、思わず視線を外す。しばらくは、俯きながら歌を聞いていた。




 ***




「キャー!! 六年生よ!!」
「かっこいいぃー!!」
「立花先輩こっち向いてぇー!!」
「中在家せんぱぁーい!!」
「善法寺先輩かっこいいー!!」



五年生の曲が終わり、次は六年生だ。だが、六年生が舞台へと入った瞬間、くのたまを主に女性方が黄色い叫び声を発した。思わずびっくりしてしまった。五年生達が戻ってきたのか、「あ、皆お疲れー」「有難う御座います、タカ丸さん」と言うタカ丸と久々知の会話が聞こえた。私は自然とハチに目を向け、「お疲れ様」とぎこちなく言う。



「ははっ、目が合っただけで顔真っ赤でしたね」
「っ……!!」



図星だった。でも、そんなに直球に言わなくても……。私は真っ赤な顔ながらも、ハチを睨み、「黙れ、凡愚め」と言う。私の言葉を聞いて「え、ぼんっ……!!?」と驚いているハチを余所に、私は六年生へと目を向ける。くのたまや他の女性方は六年生達にメロメロだ。五年生もカッコいいと思うんだけどなあ……。



「「「「「「DOKI×2で壊れそう1000%LOVE HEY!!」」」」」」



一人一人が「Are you ready?」と言うところ。そこだけで、女性の方々は失神しそうなくらい顔を赤くして叫んでいる。もはや「キャー」が「ギャー」になっているのは気のせいだろうか。思わず口角が引き攣ってしまう。ふと、遠くの方で微かに、パシャッ、という音が聞こえた。そちらへ目を向けると、きり丸が六年生達を写真に収めていた。あの子揺るぎねえ……。



「仙蔵先輩が輝いている……」
「小平太先輩、凄くキラキラしている……」
「あの文次郎先輩が輝いて……?いや、そんな馬鹿な……」



綾ちゃん、滝、三木の反応に苦笑してしまう。三木なんて特に酷い。と、その時、私の手に何かが触れた。驚いて自分の手を見れば、ハチの手があたっていた。ハチの顔を見上げると、表情は髪の毛で見えなかったが、耳が真っ赤だった。もしかして手を繋ごうとしてくれたのかな、なんて私は少し笑って、ハチの手を握った。



「っ小雪さん……!?」
「顔真っ赤。さっきと逆だね」
「なっ……」



ハチは顔を真っ赤にしながらも、私の手を握り返した。お互いの手が熱い。辺りを見渡すと、誰もが楽しそうな表情でライブを見ていた。六年生も、イキイキとした表情で歌って踊っている。今日は珍しく、善法寺の不運っぷりがあまり無い。ライブイベントは大成功のようだ。

 
53/68
しおりを挟む
戻るTOP



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -