第51話


順番はお兄ちゃん、私、くのたま、一年生、二年生、三年生、四年生、五年生、六年生という順になっている。その為、既にお兄ちゃんが舞台の隅に立っている。まずは楽器を演奏するメンバー紹介ということで妲己から太公望殿達の紹介がされ、次にかぐやから家族の方々への言葉が言われた。



「それでは、早速内容に入りたいと思います。まず最初は、この学園で医務室の手伝いをされている氷室柊様からにございます」
「それじゃ、スタート!!」



妲己の言葉により、お兄ちゃんが舞台の中心へと行く。前奏が流れ、歌が始まった。えっと、お兄ちゃんが歌う歌はSunSet Swishのありがとうだったか。



「今どうしようもなく止めどなく溢れだす涙を辿れば、思い出の中にいるあなたに会える♪」



常日頃アニソン、もしくは古い曲しか歌ってこなかったお兄ちゃん。お母さんはずっと「もっと爽やかな曲とか歌ってほしいなー」と言っていたのが、今日見事に叶った。チラッ、とお母さんの方を見ると、お母さんは既に涙ぐんでいた。ああ、そっか。私はどうやら忘れていたことがあったらしい。お母さんは、物凄く涙腺が弱いのだ。ちょっとしたサプライズでも、お母さんは嬉しくてすぐに泣いてしまう。次私なんだけどなー。思わず苦笑してしまう。でも、感動してもらえているようで良かった。ふと気がつけば、涙腺が弱いであろう他の御家族の方々も涙を流していた。



「ずっと、どうしてもどうしても、素直に言えなかった言葉♪ 本当にありがとう♪」



お兄ちゃんの声は、なんというか爽やかも行けるし古い曲も行けるような声なのだ。何にでも合う声とは違うのだが、多少の声の変化が出来る。そのせいか、この曲とお兄ちゃんの声は合っている気がする。それから時間が過ぎて、私の番となった。



「二番手は、この学園でお悩み相談室をやっている氷室小雪様にございます」
「小雪、頑張ってねー!! ではでは、スタート!!」



舞台に上がると、妲己に手を振られ、私も手を振り返す。そして、三蔵様がキーボードを演奏する。



「空を押し上げて♪ 手を伸ばす君、五月のこと♪ どうか、来てほしい♪ 水際まで来てほしい♪」



ふと、視界に入るお母さんとお父さん。お母さんは号泣で、お父さんは少し涙ぐんでいる。また、思わず苦笑してしまう。私が苦笑している事に気づいたのか、お母さんも泣きながらではあるが苦笑した。



「薄紅色の可愛い君のね♪ 果てない夢がちゃんと終わりますように♪ 君と好きな人が100年続きますように♪」



一曲だけというのは、結構短いもので。数分後には、私の曲は終わっていた。次は、くのたまの子達だ。すれ違う際に「頑張ってね」と言うと、「はい!」と元気よく返事をくれた。何あの子達彼女に欲しい。



「小雪ちゃん、ニヤニヤしないで戻った戻った」
「ははっ、くのたまの子達が可愛くて、つい」



妲己に言われ、ニヤけながらも自分が元いた場所へと足を進める。元の場所に戻ると、ハチが私に笑いかけてくれた。私もつられて笑う。「歌上手いですね」なんてハチが褒めるものだから、私は「普通だよ」と言いながらも笑みを零した。



「このイベント、どうやら大成功みたいだよ」
「え?」
「観客席見てみな」



私の言葉に、ハチが観客席へと目を向ける。そして、目を丸くした。招いた人達のほとんどの人が涙ぐんでいる。それほど嬉しいのだろうな。まあ、これからはもっと盛り上がるけど。なんてったって、最後の六年生は皆が見たとおり輝いているのだから。いつもの忍者している忍たまの姿ではない。まるで、現代のジャニーズ。



「そういえばハチ、私まだハチに言ってないことがある」
「え? なんですか?」
「――…その格好、凄く似合ってる」



あ、顔真っ赤になっちゃった。

 
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