第49話


「――…結婚……?」



四年生達は、ハチを除く五年生達に集められていた。内容は「二人の結婚」について。
くのいち教室のユキがハチに、”小雪さんと結婚する気はないのか”って聞き、ハチは顔を真っ赤にして”やれるならやりたい”と言ったのだそうだ。三郎が後でユキに聞いた話によると、小雪さんもハチと同じ気持ちらしく、それならハチを除く五年生たちが一肌脱いで、結婚式をあげてやろう、ということらしい。
五年生達の言葉に、四年生達は「ほへー」と口を揃えて言った。四年生達も小雪同様、結婚のことなどまだ考えていなかったのだ。



「つまりは、えーっと……、」
「竹谷先輩が小雪さんと結婚したら、」
「竹谷先輩は、僕達の義理の兄で、」
「私達は、竹谷先輩の義理の弟ってことか」



喜八郎と三木の言葉に、タカ丸は思わず「え、考えるとこそこ?」と苦笑を零す。滝は、顎に手を当てて何かを考えていた。結婚となると、結婚用の着物が必要となる。自分達の金だけでは、二人分はとてもじゃないが買えない。



「結婚用の着物ってどうするんです?」



滝がそう聞くと、勘右衛門が「あ、そこら辺はかぐやさんに頼んでおいた」と言う。かぐやは仙人で、今となっては力もだいぶ溜まってきた為、そういうことも出来るようになったらしい。ちなみに、ライブで必要な物もかぐやが出す予定だ。



「あ、それから、ハチと小雪さんが着るのは小雪さんの世界の結婚衣装らしいのだ」
「え!? それって普通じゃないんだよね!?」
「男性用はすっごくかっこよくて、女性用はすっごく綺麗らしいよ」
「はあ、竹谷先輩が勢い余って小雪さんを襲わないか心配だ……」
「そういう時は、僕達で退治しなきゃ」



拳を作ってむんっと意気込む喜八郎。そんな喜八郎を見て、三木も「ああ、そうだな!!」と拳を作った。そんな二人を見て呆れるのは滝、苦笑するのはタカ丸。喜八郎と三木は、小雪のことになると性格が変わってしまうのだ。



「ぎゃぁぁああ!!! 小雪さん、そっち!! そっちに行っちゃいました!!!」
「オーケィ、ハチ!! 任せときなァ!!」
「あああああ!! ジュンコ逃げた!!」
「何してるんですか竹谷先輩!! ジュンコぉぉおおおお!!!!」



外から聞こえる会話。きっと、生物委員がまた毒虫を逃がしてしまったのだろう。小雪は、恐らくそれに巻き込まれている。四年生と五年生の口角が引き攣る。それほど、凄まじいくらいに生物委員は動揺しながら毒虫を探していた。雷蔵は外の声に苦笑しつつも、「そういうわけだから、君達にも協力してもらうからね?」と言う。



「任せてください!!」
「華麗に協力させていただきます!!」
「あ、小雪さんの髪を結う時は言ってね」
「小雪の為なら」



三木、滝、タカ丸、喜八郎の言葉に、三郎が「頼もしい後輩だな」と笑う。隣に居る兵助が「確かにな」と同意した。ふと、勘右衛門が立ち上がる。向かう先には、障子。障子を開けて、外を見た。



「ハチぃー!! 俺達も手伝うよー!!」
「え、凄ぇ助かる!!」



笑って庭へと出る勘右衛門。それに続き、他のメンバーも庭へと出た。



「嫌ぁぁあ!! 背中!! 背中にいるぅぅう!!!」
「お、おおおお落ち着いて三治郎!!!」
「小雪さんも落ち着いてください! 三治郎、今取るからな」
「は、はいぃ!!」
「っ!!? お、俺の着物の中にも入ったぁあ!!?」
「ちょ、待っ、じっとして!!」



願わくば、二人が離れ離れにならないことを。

 
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