第48話


ライブをやる、と決めて練習を始めてから何日か経った。
私達は授業の後に、暇ができたら練習をやっている。物覚えが早いのが理由なのだろうか。皆はほぼ完璧に歌やダンスをこなしている。そういえば、楽器の演奏を忘れていた。そのことを太公望殿に聞けば、ベースを太公望殿、ギターを悟空、ドラムを酒呑童子、キーボードを三蔵様が演奏するらしい。ちなみに、司会は妲己とかぐや。妲己には既にかぐやがライブのことを話したようだ。



「愛を込めて花束を♪ 大袈裟だけど受け取って♪ 理由なんて訊かないでよね♪ ……えっと、どうですか?」
「”受け取って”と”理由なんて”のところ、間空きすぎてるからもう少し詰めようか」
「”受け取って”を伸ばせば良いんですね?」
「うん。他は大丈夫だから、もっと自信持って歌うと良いよ」
「はい、有難う御座います!!」



くのたまの子に、「自信が無い部分があるから聞いてほしい」と頼まれ、女の子ということに舞い上がった私は了承した。聞いてみたが、普通に上手だ。指摘する箇所も少ない。この調子なら大丈夫そうだな、と思っていると「あの、」と声をかけられた。



「まだ名前言ってなかったですよね。あたし、ユキっていいます!」
「あら、可愛らしい名前」
「か、可愛らしいだなんて、そんな!! 本当のこと言っちゃ駄目ですよぉ〜!!」
「う、うん……?」



赤くなった頬に手をあて、くねくねするユキちゃん。その言葉から、とんでもない言葉が出てきやがった。思わず口角が引き攣る。でも、外見は確かに可愛い。



「そういえば、小雪さんっていつから竹谷先輩のこと好きだったんですか?」
「えっ!!?」



ユキちゃんがいきなり話題を変えてくる為、思わず声が裏返ってしまった。あばばば。皆がライブの練習に集中していて良かった。私は赤くなってしまった頬を、パタパタと手で煽ぐ。



「い、いつって言われても、自覚したのは結構前で……」
「告白はどっちから?」
「は、ハチから。といっても、一回振っちゃったんだけど……」
「振った? 何でですか?」
「あー、色々考えこんじゃって。でも、その時には既に好きだったし、諦めずにいてくれたから、手を取ってみようかと」
「それで今はイチャラブなんですね!!」



い、イチャラブって……!! ユキちゃんの目がキラキラと輝いている。呟いた言葉が「あたしも好きな人作りたーい」。うん、ユキちゃんは将来美人さんになるだろうな。ユキちゃんっは目を輝かせたまま「結婚ってするんですか?」と聞いてきた。結婚……、そうだなあ、あまり考えてなかった。



「お似合いなんですから、結婚すべきです!!」
「そ、そりゃ、結婚できたら良いなー、とは思ってるけど……」



異世界人同士の恋愛は、やっぱり無理がある気がする。恋人にするならハチだけど。結婚するならハチだけど。でも……、うーん……。悩む私に、ユキちゃんは真剣な表情をしながら「結婚のこと、考えておいた方が良いですよ」と言ってきた。と、言われてもなあ……。



「あ、このこと竹谷先輩に話しておきますから」
「は!? え!?」
「大丈夫です!!それとなーく、言っておくんで!!」
「い、いや、そういう問題じゃなっ……ああああ!!! なんで行っちゃうのぉぉおおお!!!!」



清々しい程の笑みを浮かべ、私に背中を向けて走り去っていくユキちゃん。捕まえようと手を伸ばすが、手は届かずに空ぶる。な、なんてこと……。その場に唖然と立ち尽くす私。きっと、ユキちゃんはハチのところへ行ってしまったのだろう。下手に止めれば、鉢屋や尾浜あたりがニヤニヤしながら追求してくる。そしたら、その場に居た私は逃げ場を無くす。



「あれ? 小雪さん、どうかしたんスか?」



と、その時、きり丸がやって来た。慌てて「な、なんでもないよ」と言うけれど、「そのわりには冷や汗のようなものが……」と怪しむきり丸。私は「ゴホンッ」と咳払いをして、そっぽを向く。



「小雪さん、教えてほしいところがあるのですが、今よろしいですか?」
「あ、ああ、滝。大丈夫だよ」



タイミング良く現れた滝。ナイスだよ滝!!後で褒美をやろう。私は滝に「向こうで教えるよ」と言い、きり丸に「じゃあ」と言ってきり丸に背を向けて歩き出す。きり丸は納得していない顔をしているが、気にしてはいけない。



(絶対暴いてやる……。by.きり丸)

 
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