第42話


「この巻物どうする?」
「そうですね……、どうにかして遠呂智様の手に渡らないようにせねば……」



自室へ戻る為、かぐやと肩を並べて廊下を歩く。私の手には朱色の巻物。もうこれ、いっそのこと燃やしちゃった方が遠呂智の手にも渡らないし、他の人も悪用しなくて良いと思うんだけど。そう思い、かぐやに言おうとしたその時、どこからともなく、ドドドドドドッ!!!、と大きな音が聞こえた。何が起こるか分からない為、巻物は懐に入れる。後ろから音が近づいて来る。私とかぐやは首を傾げながらも後ろを振り向く。



「小雪さん、覚悟ぉぉぉおおおお!!!!」
「ギンギィィィィィイイイン!!!!」
「いけいけどんどぉぉぉおおおん!!!!」
「う、ウワァァアア!!! 変なの来たァァァアアア!!!!」



後ろを振り向くと……、武器構えて突進してくる食満、潮江、七松がいました。っていうか、今明らかに「覚悟」って言ったよね? 私殺されるの? 何故? 若干青ざめながら「逃げるよ、かぐや!!」とかぐやをお姫様抱っこする。その際驚いていたようだが、今は構っている暇は無いようだ。迫りくる三人を横目で見つつ、全速力で逃げる。



「大人しく捕まってください!! これは俺達に与えられた任務なんです!!」
「太公望から”小雪を捕まえて連れて来れば、小雪と決闘でもさせてやろう”って言ってたからな!!」
「なにがなんでも貴女には捕まってもらいますよ!!」



おのれ太公望ォォオオオ!!! アイツの仕業かァァァアアア!!!!
潮江、七松、食満の順に言う言葉に、私は「次会ったらアイツ殴る」と心の中でしっかりと決めた。怒りのあまりスピードアップしていたのか、いつの間にか三人との距離は少し離れている。そのことに内心ホッとしつつ、曲がり角を曲がる。だが……、



――ズボッ
「え」
「え?」



曲がり角を曲がった途端、床の感触がしなくなった。それと同時に来たのは浮遊感。あ、これ落ちる。「なっ!!?」と驚きながらも、落として怪我をさせないようにかぐやをしっかりと抱きしめる。かぐやは一瞬驚いたようだったが、すがりつくように私の着物を握りしめた。



――スタッ
「……っと……」



落下の速度を落とす為、一回転をして着地する。ふう……、なんとか無事に着地できて良かった。思わず溜息をつく。恐らく落とし穴という罠にハマってしまったのだろう。頭上を見ると太陽の光が見える。とりあえず、「大丈夫?」と聞きながら、かぐやをゆっくり降ろす。



「有難う御座います。えっと、その、大丈夫でしたか……?」
「ん、大丈夫。なんともないよ」



そう言い、辺りを見渡す。落とし穴に落ちたわけなのだが、落ちた先には私達の背はあるであろう高さの道がどこかに続いている。綾ちゃんがいまだに掘り続けている穴なのだろうか。それとも、この先にもまだ罠があるのだろうか。



「此処は体育委員会と作法委員会が作った特殊な地下だ!! 先生はこのことを誰も知らないぞ!!」
「っきゃ!!? あ、七松様……、何故此処に……」
「ああ、縄梯子をかけて降りて来たんだ」
「なんだこいつナメてやがる」



上を見ると、確かに縄梯子が掛けられていた。縄梯子で降りながら喧嘩している潮江と食満を見て、再び溜息をついた。七松に顔を向けると「地下部屋に案内するぞ!!」と言い、七松はかぐやの手を掴んで歩き出した。かぐやはそのことに驚きながらも、七松に敵わないと思ったのか苦笑した。



「ちょっと七松くーん? 可愛いかぐやと手ぇ繋がないでもらえる? 羨ましいだろうが」
「小雪さん本心だだ漏れじゃないですか」
「うるせぇ食満留」
「食満です食満!!」
「潮江、私達も行こうか」
「え、あ、はい」
「ちょっとー!!?」



先を行ってしまったかぐやと七松について行くように歩きだす私。それと同時に、潮江も歩き出す。食満は「置いてかないでくださいよ!!」と言いつつ、私達を追いかけるように歩きだした。ちょっと面倒事に巻き込まれちゃったか……?

 
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