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「ジュンコさん、今日も良い天気だねぇ」



庭にいるジュンコさんに話しかける私。ジュンコさんは私の言葉に、舌を出した。そして、私の腕に絡みついてきた。毒蛇とはいえ、懐いてくれれば怖くない。今では、ジュンコさんと結構仲良くなったと思う。



「ジュンコさん、今日は伊賀崎と一緒じゃないんだね。……ほほう、さすがはジュンコ姉さん。伊賀崎の自立を望んでいるのね」



ジュンコさんの言っていることが分かるわけじゃない。ただ、なんとなく、会話を成立させているだけ。「……ねえ、ジュンコさん、」と私が呼びかけると、首を傾げるジュンコさん。まるで「どうしたの?」と声をかけてくれているみたいだ。私はその様子に笑みを零しながら、口を開いた。



「――…好きな人に告白するとき、どうすれば良いんだろうね……?」



思い出すのは、七松の姿。アイツはいつも「好き」とか「愛してる」とか言ってくる。でも、それが本心なのかは分からない。もしかしたら、友人として、なのかもしれない。……なんつって。私はなにを今更乙女に走ってんだか。



「ジュンコさん、私ね、元の世界で好きな人がいたんだ。でも振られちゃってさー」



といっても、今はもう好きでもない。高校入ってすぐ好きになって、その何か月後に告白をした。けれど、振られたんだ。振られた瞬間、涙が出て止まらなかった。泣き顔を見られたくなくて、俯いて「泣いちゃってごめん」と言った。でも……、彼は、嫌な顔ひとつせずに、頭を撫でてくれた。



「”学校卒業するまで野球に専念したい。でも好きになってくれて凄く嬉しい。ありがとう。”って言ってくれた。もっと好きになっちゃうっての」



嬉しかった。振られたけど、「好きになってくれて凄く嬉しい」だなんて言われて、気持ちが楽になった。「ジュンコさんは良いなあ。相思相愛じゃん」と私が呟くと、ジュンコさんは私の頬にすり寄ってきた。慰めてくれているのだろうか。「ありがとう」と呟き、目を閉じる。



「――…秋奈姉っ」



おや、きり丸の声だ。閉じていた目を開け、きり丸を見る。きり丸の顔がなにやら赤い気がする。



「きり丸、どうしたの?」
「あ、あー…、えっと、その……」



頬を掻いたり、目線を泳がせたりしているきり丸。ジュンコさんを見ると、ジュンコさんも分からないようで首を傾げていた。再び「秋奈姉!!」と名前を呼ばれ、きり丸に視線を戻す。すると、きり丸がぎこちなく私の前髪を上げた。え、どうしたの。



――ちゅっ
「……お……?」



私の額に唇を落としたきり丸。驚いていると、きり丸が顔を離した。「こ、この前のお返し!!」と言って、きり丸は顔を赤くしながら何処かへ行ってしまった。思わず唖然とする私とジュンコさん。……なに、なになになに。可愛いんですけどあの子。お返しとか、おま……。手で口を覆う私。鼻血出てないよね? 大丈夫だよね?



「ちょ、ジュンコさん。私、今からきり丸襲いに行ってくるわ」
「キシャーッ!!!」
「え、駄目? でもさ、私にも理性というものがあってだな、」
「キシャァァアアアッ!!!!」
「ひえええええ!! ごめんなさい襲いません自重します!!!」



怒ったジュンコさんには頭が上がりません。下がる一方です。ジュンコさん怖い。




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