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琴音さんがヘムヘムから地図を受け取った。でも、琴音さんはその地図を私に見せようとしない。何故だろう。



「行きましょう?」
「あ、はい……」



でも、学園長先生はまだ「行きなさい」とは指示していない。勝手に行ってしまって大丈夫だろうか。不安に思ったが、琴音さんが私の手を引っ張った為戻ることは不可能になってしまった。ああ、まったく……、なんでこんなことになったんだ。



「……暗い、ですね……」



裏山の道を進む私と琴音さん。夜ということもあって、周りは暗い。しかも、静寂で少し涼しい為、恐さが余計に増す。肝試しを始めて5分くらいは経っただろうか。その間にも、スタート地点から結構遠くまで来た。もう、次のペアが出発しても良い頃だろう。



「ねえ、秋奈ちゃん?」
「はい、なんですか?」
「この前は、ごめんなさいね。あんなことしちゃって……」



琴音さんが申し訳なさそうな顔をしている。”この前”とは多分、私が琴音さんに襲われかけたときだろう。私は小さく「いいえ」と言う。ちゃんと反省してくれているなら、もうそれで良いし。



「最初から下は駄目よね。段々気持ちよくなってもらわなきゃ、気に入ってもらえないわよね」



頭が真っ白になった。何を言ってるんだ、この人。反省すらしていないのか……?むしろ、悪化している……?



「だから、ね? 今度こそ、気に入ってもらうわよ?」



グイッ、と腕を引っ張られる。「っ!?」と驚くけれど、琴音さんは私の腕を引っ張ったまま道から外れたところに向かっている。まさか、この展開は……。「嫌だ!! 放して!!」と抵抗をしてみるが、全く効果はない。



――トッ
「っ……!!」



道から外れた茂みに連れて行かれた。そして、背中には木、目の前には琴音さんという状態で挟まれてしまった。両手は琴音さんによって縄で拘束されてしまっている。逃げ道は無い。



「力を抜いて、痛くしないから」
「っ……」



耳元で囁かれる。怖くてビクついてしまった。腰を撫でられ、次第には尻を撫でられる。



「や、だ……! 誰か!! 誰かたすkんんっ……!!」



叫ぼうと試みるも、琴音さんの手によって叫ぶことができなくなってしまった。ど、どうしよう……。そういえば、先生方や下級生が私達の様子を見ているはず。……だが、気配が全然感じられない。それに、私達以外の音も全く聞こえない。まさか……、私と琴音さんが早く行っちゃったから、先生達の準備が整ってなかった……? となると、先生達はこの場にはいない。……ああ、最悪だ……。



「叫んじゃ駄目。楽しい時間が台無しになっちゃうわ」



琴音さんにそう言われた瞬間、琴音さんに腕を引っ張られる。驚いている間に、私は琴音さんに押し倒される状態になってしまった。そして、マスクを取られ、琴音さんのハンカチを私の口に入れられる。更に驚いていると、琴音さんの手が私の胸元へと行っていることに気づいた。



「っんん……!! んーっ……!!」



着物がはだけるのを無視して、私は短パンを穿いている為、大胆に足を思いっきりバタバタとさせる。だが、琴音さんは私の抵抗を無視し、私の襟をはだけさせる。それにより、私のスポブラがあらわになってしまった。



「あら、可愛らしい胸ね」
「んー!! んー!!」



琴音さんが私の胸を触る。「嫌だ」と首を振っても、琴音さんは止めない。ふと、何処からか誰かの話し声が聞こえる。私達の次のペアだろうか。「んー!!」とできるだけ大きな声で助けを求める。私達の次のペアは、確か竹谷と斉藤だったはず。斉藤はともかく、竹谷なら優れた聴覚で気づいてくれるだろう。
――…ガサガサッ
ほら、段々と音が近づいてくる。



「ここら辺から聞こえたはz……は……?」
「八左ヱ門君、どう、し……た、の……」



姿を現したのは、予想通り竹谷と斉藤の二人だった。二人は、私と琴音さんの体勢を見て目を丸くして驚いている。琴音さんは、二人の登場に驚きはしたが、すぐに微笑んだ。



「……な、何してっ……!!」
「あら、見て分からないかしら?」
「い、いや……!! 分かります、けど……!!」



二人は顔を真っ赤にしている。ふと、竹谷と目が合った。その瞬間、竹谷は私の状態に目を見張っている。私の涙を流している姿に、竹谷は怒りをあらわにする。そして、琴音さんを睨みつけて「今すぐ秋奈を放せ!!」と怒鳴る。しかし、琴音さんは「何を怒っているの?」と首を傾げる。そのことに竹谷は更に腹を立てたのか、ズンズン、と近づいて来る。かと思ったら、琴音さんの脇腹を蹴飛ばしてしまった。



「きゃっ……!!」



琴音さんが地面に倒れる。解放された私は、驚きながらも口に詰められたハンカチを取りつつ上半身を起こす。すかさず斉藤が「大丈夫!!?」と駆け寄ってきてくれた。そして、手に巻かれた縄を解いてくれる。竹谷を見ると、眉間に皺を寄せて琴音さんを睨んでいた。琴音さんも、竹谷を睨んでいる。



「アンタ、どういうつもりだよ!!? 秋奈をこんな目にあわして、何がしてぇんだよ!!」
「……貴方には関係のないことよ」
「んだとッ……!!?」
「八左ヱ門君、落ち着いて!!」
「ッ……」



竹谷が拳を作って、怒鳴るのを堪えている。その隙に、琴音さんは走って何処かに行ってしまった。竹谷はそれに気づいたが、追いかけようとはしなかった。



「……秋奈、ヤられてねぇよな……?」
「うん、未遂。……二人とも、ありがとう」



二人が来てくれなかったら、と想像するだけでゾッとする。本当、二人が来てくれて凄く良かった……。涙が出るのを堪える。すると、ぎゅっと斉藤に抱きしめられた。



「良かった、無事で。相手が同性でも、処女喪失だってあるもんね。もう大丈夫。僕達がいるから」
「うん……」



ぽろり、涙が一粒流れてしまった。ふと、頬を赤らめて気まずそうに目を泳がせている竹谷に気づいた。私は斉藤から離れて、「竹谷……?」と声をかける。竹谷は「お、おう!!? なんだ!!?」と私から視線を逸らした。「どうしたの?」と聞くと、



「……や、その……む、胸……」



と小声で言われる。竹谷に言われて思い出した。そうだ。今の私は琴音さんの手によって、ブラを付けているとはいえど胸を晒している。慌てて「ごめん!!」と自分自身顔を赤くしながら、胸元の襟を直す。



「秋奈ちゃん、僕達と一緒に肝試し再開しない?」
「え、良いの……?」
「良いの良いの。ね、八左ヱ門君」
「ああ、そうですね。秋奈を一人にするわけにはいかないし」



竹谷が「ん」と私に手を差し出してくれる。私は「ありがとう」と言いつつ、その手を取った。




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