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月日の流れは早いことで、もう一週間が経ってしまった。今でも、私は肝試しの話をされたことを覚えている。あの時は本当に絶望した。そして今、裏山に全員が集合している。……はは……、泣きたくなってきた。



「上級生と秋奈、琴音ちゃんは前に出てくじを引きなさい。くじの番号が早い順から肝試しを行ってもらう」



全員の目の前に立っている学園長。その横には、くじ箱を持っているヘムヘム。どうやら同じ番号の紙を持った人とペアらしい。二人組のペアなわけだが、ひとつだけ三人組のペアが出来るようだ。道は地図を貰えるようで、それを頼りに肝試しをするんだそうだ。ヘムヘムが一歩前に出て「ヘム!!」と私達にくじ箱を出す。上級生、私と琴音さんがくじを引く為に前に出た。



「…………」
「おやまあ、秋奈ってば顔真っ青」



皆がくじを引く中、私はくじ箱を睨みながら青ざめていた。そんなところを、綾部に声をかけられた。「顔が真っ青」ということを指摘され、私は菩薩のような微笑みで綾部を見る。あまりの怖さに、私はどうやら壊れかけているらしい。



「綾部、何を言うのです? 私達は今から神聖なる場所に行くのですよ? 何を真っ青になることがございましょうか』
「え、キャラ崩壊? あ、元々だった」
「よいですか、綾部。幽霊とは、亡くなった者が未練がある故にこの世に止まってしまう者のことです。その幽霊達の未練を無くす為、私達は今から肝試しをするのですよ」
「いや、絶対有り得ない」
「決して相手を怒らせてはいけません。……では、逝ってまいります」
「漢字が違う気がするのは何故だろう」



綾部に別れを告げ、くじを引きに行く。どうやら残りは私と綾部だけだったらしい。私と綾部以外は、くじを引いて相手を探していた。「頼もしい人をお願いします!!」と言いながらくじ箱に手を突っ込み、その中にある紙を取ってくじ箱から手を出す。紙の番号は「1」だった。……え……、まさかの1番最初……?



「あら、一緒」



横から声をかけられた。青ざめながらも、声のした方を見る。そこには、ニッコリと綺麗に微笑んだ琴音さん。私は「え」と固まってしまう。しかし、琴音さんはそんな私に気づかず「秋奈ちゃんと一緒だなんて嬉しいわ!」と言った。これは参った。まさか琴音さんと一緒に組むことになろうとは……。



「あ、あの、ごめんなさい。善法寺に話すことがあったので、ちょっと行ってきて良いですか……?」
「ええ、良いわよ」



そう言ってくれた琴音さんに「ありがとうございます」と礼を言い、善法寺の元へ向かった。善法寺の隣には久々知がいる。どうやら、善法寺は久々知と組むらしい。「善法寺っ」と声をかけると、善法寺と久々知が私に視線を向けた。



「どうしたの?」
「琴音さんとペアになっちゃった……」
「え」



伊作も、私と同じように青ざめる。久々知は、私と善法寺の様子に首を傾げた。善法寺は私の肩に手を置き、「ど、どどどどどうすんの秋奈ちゃん!!」と私以上に焦る。そんなことに内心呆れる。



「いや、だから助けを求めようと思って善法寺の元に来たんじゃん!!」
「うわ何それ僕頼りにされてるよ嬉しい!!」
「素直に喜ぶな!! 私を助けろ!!」



私も善法寺も、混乱して変なことを言っている。それを見ていた久々知が、苦笑しながら「落ち着いて」とストップをかける。年下のくせに久々知の方が大人びている、だと!!?



「とりあえず、秋奈ちゃんはそのまま琴音さんと組んで。何かあったら叫ぶように」
「う、うん……。で、善法寺と久々知は番号いくつ?」
「俺達は4番だ」
「あー…、遠いな……」



しょぼくれる私。自分の身は自分で守れなにがなんでも全力で、ってことね。落胆している私を励ますように、私の頭を撫でながら「大丈夫、叫べば誰か駆けつけてくれるだろうから。先生方も見守ってくれるし」と善法寺が言う。少し複雑だけど、励ましてくれたから素直に「ありがとう」とお礼を言う。そして、そのまま琴音さんの元に戻った。



「ふむ、どうやらペアを見つけたようじゃな」



周りを見渡せば、確かに全員がペアを組み終わっていた。学園長先生の「順番通りに並びなさい」という指示に、私達は順番通りに並ぶ。どうやら、私と琴音さんの次は、竹谷と斉藤のペアらしい。――…さあ、今から肝試しの始まりだ。




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