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「ッ!!」
――ビュッ!!
「っつ……!!」



裏裏山にて。
私と土井先生は戦っている。「何故か」と聞かれれば、それは簡単なこと。「私の特訓の為」だ。忍術学園は比較的平和な方なのだろうけれど、此処は戦国時代。いつどこで何があっても良いように、私は強くなるんだ。私の元に、容赦なくチョークが飛んで来る。私はそれを、弾で全て撃ち落とす。



「っ……」



拳銃にロックをかけ、弾を出さないようにする。そして、その拳銃を逆手に持つ。向こうから土井先生が迫ってくる。私はその場で土井先生が来るのを待つ。「せいッ!!」と土井先生が私に蹴りを入れてくる。私はそれをしゃがんで避ける。



「ッなに……!!?」
「ッ!!」
――ゴッ
「ッぐ……!!?」



土井先生が驚いている好きに、私は拳銃で土井先生の顎にアッパーをかました。それにより、土井先生が倒れる。っしゃ……!! 勝った……!! 倒れている土井先生をそっちのけで、私はガッツポーズをする。土井先生との特訓を始めて既に何日かが経過。私は手加減されているとはいえ、いつも土井先生に負けていた。でも!! 今!! ついに!! 私は、土井先生に勝つことができた!!



「いってて……。秋奈、強くなったなあ」
「いひひ、これも土井先生のおかげ!!」



そう言うと、土井先生は照れくさそうに笑った。




 ***




あれから裏裏山から忍術学園に戻ってきて、土井先生の顎の手当てをするために医務室へと訪れた。



「特訓とはいえ、結構過激な特訓をしてらしたんじゃないんですか?」
「あっはは……、秋奈が結構強くなっていくから、つい……」
「”つい”じゃありません!!」



土井先生が、善法寺に手当てをされている。しかし、説教付きで。善法寺はいたって真剣だが、土井先生は苦笑している。周りに居る三反田と川西も苦笑。その時、善法寺が私に視線を向けた。げっ、まさか次は私……?



「秋奈ちゃんも!! 女の子なんだから、あまり派手に動かないの!!」



あー、やっぱり……。



「秋奈ちゃんはもっと女の子らしくなりなよ。だから17歳にもなって未婚なんだよ」
「おま、ソレもはや説教じゃねぇよ悪口だよ!!」
「なに? 僕はこんなにも秋奈ちゃんのこと心配してるのに、その態度?」
「え!? い、いや……!!」



黒笑を浮かべる善法寺に、私はたじたじ。と、そこで医務室の障子がスパァーンッと勢い良く開いた。そのことに、私も説教していた善法寺も、その場のみんなも驚く。土井先生が小さく「き、きり丸……?」ときり丸の名前を呼ぶ。そう、障子を勢いよく開けたのはきり丸だったのだ。しかし、その顔はなんだか怖かった。眉間に皺を寄せて、私をジッと睨んでいる。……え、私なにかした……?



「秋奈姉の馬鹿……」



弱々しく吐かれたその言葉。と同時に、きり丸が私に抱きついてきた。ちょっと待て、状況が分からない。



「秋奈姉、ここに来てから先輩達ばかり。俺のこと、嫌いになった……?」



涙を浮かべている目で、不安そうに言うきり丸。私は一瞬唖然としてしまう。しかし、一瞬だ一瞬。私の顔は赤みを帯びていく。きり丸可愛すぎるっ……。マスク越しで口に手を添える。我慢だ我慢。いくらきり丸が可愛いとはいえ、この顔で抱きしめたら変態確定だ。



「私は、きり丸のこと嫌いにならないよ」
「……絶対……?」
「うん、絶対」



「証拠と言ってはなんだけど、」と言いつつ、マスクを顎の方にずらす。そして、きり丸の前髪を手で上げて、そこに唇を落とす。私の行動に、きり丸が顔を赤くし、目を丸くして驚いている。私は、そんなきり丸を見て、秘かに笑いながらマスクを元に戻す。きり丸は混乱しているようで、「な、な、な……!?」と言っている。



「きり丸が思ってる以上に、私はきり丸のこと好きなんだけどなー……?」
「ッ……!! お、俺も好きだよ!!」



きり丸は、顔を真っ赤にさせたままバタバタと医務室から走って行ってしまった。あらあら。あんなに顔を真っ赤にさせちゃって。きり丸ってば本当可愛いんだから。



「……秋奈、今の他の男にやったら駄目だからな!! 絶対に!! 分かったな!!?」
「あははっ、やるわけないじゃん」



おちゃらけた口調で言う私。すると、土井先生は怒って「やったら怒るからな!!」と言った。もう既に怒ってるよ、土井先生。過保護だなあ。でも、頬は自然と緩む。




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