02


歩きで土井先生の家まで来た。それほど遠くはなかった為、二十分程度で着いた。道中、自分以外に一人の男の子も居るということを聞いた。私は銭に反応するきり丸の姿を想像し、「なるほど」と思った。自分の家の玄関を開ける土井先生。中に入るのを見て、私も続いて中に入った。



「あ、土井先生!! おかえりな、さ、い……?」



目の前に居るのは夕飯を作っているきり丸。きり丸は土井先生に目を向けるが、私の存在に気づいて私を見る。そして、口をポカンと開けながら固まってしまった。そんなきり丸に、土井先生は苦笑する。



「きり丸、驚かせちゃったな。この子は、今日から私達と一緒に暮らす子だ」
「あ、天道秋奈といいます……!!」
「……ど……、土井先生が奥さんになるかもしれない人つれてきたぁぁあああ!!!?」



きり丸が驚いた様子で、私を指さす。土井先生は予想していたようで、「やっぱりそうなるか……」と呆れている。そして、きり丸の頭をガシッと掴み、「秋奈ちゃんは、住む家が無いから一緒に住むことになっただけだ!」と説明する。その言葉を聞き、きり丸は「なんだ、土井先生に春がきたかと思ったのにー」と頬を膨らませる。正直言うと、もの凄く可愛い。



「俺、摂津のきり丸っていいまーす!! 俺の方が年下だし、敬語も無しで呼び捨てにしちゃってください! よろしくーう!!」



テンション高く言うきり丸に、私は少し戸惑いながらも「こちらこそよろしく」と笑みを浮かべる。なんだか弟が出来たみたいだ。きり丸の笑顔に癒されていると、「秋奈さん秋奈さん、」と袖を引っ張られた。「何?」と聞くと、きり丸はニッと太陽のような笑顔で、



「秋奈さんのこと、”秋奈姉”って呼んでも良いッスか?」



と聞いてきた。その笑顔が可愛いのなんの。私は「良いよ!! 敬語も無しで!!」とテンション高めに言う。すると、きり丸は嬉しそうに笑って「そうする!!」と頷いた。土井先生をそっちのけで、会話をするきり丸と私。きり丸は早くも私に懐いてくれたようだ。めちゃくちゃ笑顔で話しかけてくれている。うんうん、こんな弟が居たら幸せだよね。



「土井先生ね、忍術学園の先生で俺の担任なんだ!!」
「ああ、そうなんだ。だから、私のことは”土井先生”と呼んでほしいな。他はどうしても慣れなくて」



きり丸と土井先生の言葉に、「じゃあ土井先生って呼びます」と言う。まあ、心の中では最初から土井先生呼びだったけれども。私は付け加えて、土井先生に「呼び捨てと敬語無しで」とお願いする。土井先生は了承してくれて、「ついでに私にも敬語は使わないでくれ」と言った。そのことに少し躊躇するものの、私は頷き、笑顔で「分かりました」と言った。その時、「ねえ」ときり丸が声をかけてきた。



「――…秋奈姉はどこから来たんだ?」



時が止まった気がした。まさか、10歳という幼いきり丸に、こんなに的確に問われようとは。でも、大丈夫。土井先生は信じてくれた。きっと、きり丸だって信じてくれる。



「――…未来から、だよ」



私がそう言うと、土井先生は「言ってよかったのか?」と心配してくれた。でも、一緒に生活する以上仕方ない。私は「きっと、大丈夫です」と答えた。きり丸は、びっくりしているようだ。それもそうか。私は付け加えて「この服と所持品が証拠ね」と苦笑しながら言う。きり丸はハッとして、我にかえった。と、思ったら、



「すっっっげぇぇぇええええ!!!!!」



きり丸は目を輝かせて私を見た。私と土井先生はびっくりして固まったしまう。きり丸の中で一体何があったんだ。



「秋奈姉、凄ぇ!! 未来から来るとかできんの!!?」
「え!? い、いや、気づいたらっていうか……」
「気づいたら!? じゃあ無自覚!!?」
「え、えっと、私一般人なんだけど……」



目を輝かせてるきり丸めっちゃ可愛い抱きしめたい。いやいやいや、待てよ自分。ここで抱きしめたら”変人”の道を歩んでしまう。前の世界でも変人だったけれど。……あれ? でも、どうせ後で変人ってバレるなら今抱きしめたほうが良いんじゃ……。



「でも、秋奈姉がなんであろうと、俺は秋奈姉が大好きだ!!」



ニッ、と八重歯を見せて笑うきり丸。私は耐えられなくなって、きり丸を思いっきり抱きしめた。きり丸はいきなり抱きついた私に驚き、「ちょ!? 秋奈姉!!?」と私の名前を呼ぶ。



「きり丸可愛い!! 可愛すぎるよ!! ここに来て良かった!!」



その後、きり丸にうざがられ、土井先生に頭を叩かれた。




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テーマ「人外ファンタジー」
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