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時間をかけて、ニガクリタケ城付近へと来た四年生、五年生、六年生達。先生達が居ない今、一番頼りにされるのは六年生だだ。仙蔵達が居るのは、ニガクリタケ城から見えない森の中。この場所ならば、誰にも見つかることは無いだろう。仙蔵の提案で、この場所に陣をはることに決めた。



「伊作、お前は怪我人の手当てを頼む」
「うん、勿論だよ」



そう言って笑う伊作の手には救急箱。それを見た仙蔵が「うむ」と返事をした。だが、もしもの時の為に伊作だけでは不安だ。そのことに気づいたのか、タカ丸が「僕、伊作君の手伝いをするよ」と名乗り出た。「ああ、頼む」と文次郎の許可がおり、タカ丸が伊作に「よろしくね」と声をかける。伊作もその言葉に「こちらこそ」と返事をした。



「今から二人組を作って、きり丸を探してもらう」
「でも、それだと一人余りますよね?」
「そうだな。ひとつだけ三人組ができる」



兵助の疑問に文次郎が答え、仙蔵が「組み合わせは私が決めよう」と言った。その言葉を聞き、「仙蔵が決めるなら問題ないな」と文次郎が了承する。



「この私、立花仙蔵と組むのは喜八郎だ」



仙蔵の言葉に、喜八郎が「仙蔵先輩となら安心です」と無表情ながらも言った。そのことに内心嬉しくなりつつ、仙蔵は次々と決めていく。文次郎と三木ヱ門ペア、小平太と滝夜叉丸ペア、長次と雷蔵ペア、留三郎と三郎ペア、兵助と八左ヱ門と勘右衛門ペア。全員組み終わり、後は、それぞれきり丸を探し出すだけだ。



「――見つけたら狼煙を上げるように。では、捜索開始!!」



仙蔵の言葉に、皆が一斉に消える。残されたのは、救護係りの伊作とタカ丸のみ。四年生から六年生までの人数が集まったのだ。きっと、すぐに見つけることができるだろう。




 ***




こちら、留三郎と三郎の二人組。二人は、城の間近まで来た。城の壁の所で、三人の男達がなにかを話していた。二人は顔を見合わせると、頷いて男達の話に耳を傾ける。



「まさか、あんな小せぇガキがバイト来るなんてなー」
「ああ。まさか戦に必要な火薬を運んでいるとは知らねぇで」
「で、今回バイトに来た奴は捕えて戦に出すんだろ? ってことは、あのガキも戦に出すんだよな」



男達の言葉に、留三郎と三郎は驚く。あのバイトは、戦に必要な火薬、人材を集めていたのだ。きり丸はそれを知らず、このバイトを行っている。急がなければ、きり丸が危ない。「……厄介なことになっちまったな」「早くきり丸を見つけましょう」と矢羽根で会話をし、とりあえず辺りを見渡す。ふと、どこからか男達とは違う話し声が聞こえた。2人はすかさず、その会話に耳を傾ける。



「オラァ!! 逃げんじゃねぇ!!」
「ってぇな!! 放せよ!! 俺は帰るんだ!!」



見知らぬ男の声と、――…きり丸の声。どうやら、きり丸は男に捕まってしまったらしい。留三郎が「行くぞ」と三郎に声をかける。三郎が頷いたのを合図に、二人はその場から消えた。そして、男ときり丸の前に立つ。



「――…その手を放してもらおうか」
「――…きり丸は、返してもらう」



いきなり現れた二人に、きり丸は驚き、男は「な、なんだテメェ等はァ!!?」と動揺する。慌てて刀を構える男。しかし、留三郎が瞬時に動き、男の首の後ろに手刀を降ろす。「ぐあっ……!!」と呻き声を上げ、男はそのまま倒れて気絶した。手応えの無かった男に、留三郎は「弱いな」と呟く。きり丸は、その様子を見て安心したのか、腰を抜かして地面に座り込む。



「きり丸、大丈夫だったか!?」
「怪我は……、無いようだな」
「せ、先輩ぃー…!!」



留三郎と三郎に抱きつくきり丸。二人はそんなきり丸の頭を優しく撫でる。



「さて、きり丸を見つけたことだし、狼煙あげるか」
「はい、そうですね」




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