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伝子さんに「男装してみる?」と聞かれ、私は全力で拒否をした。しかし、六年生達はニヤニヤして「やれよ」と言ってきやがった。おい待て貴様等、私は男物の着物なんて持っていない。それを言ったら、伝子さんが「私に考えがあるわよーん!!」と言ってきた。ちょ、何をおっしゃる。



「で、なにゆえ四年生の長屋に……?」
「私服を借りるのよ!」



思わず「えー…」と声を漏らすと、伝子さんに「えーじゃありません!!」と怒られてしまった。ふと、向こうから田村が歩いてくるのが見えた。田村も私達に気づいたのだが、潮江の女装姿を見た瞬間瞬時に顔を青ざめた。うん、その気持ち分かるよ。それに、七松も化け物染みてるもんな。



「三木ヱ門、頼みがある。私服を貸してくれないか?」
「え、私服を……?」
「ああ。秋奈に男装を、と思ってな」



潮江の言葉に、田村が私に目線を向ける。そして納得したのか「良いですよ」とアッサリOKしてしまった。そこは断れよっ!! 「気持ち悪い貴女に着られるのは嫌だ」って言えよ!! 少し絶望感を味わっている間に、田村が私服を持ってきてくれた。……本当に男装しなきゃいけないのか。「はい」と渡された田村の私服を、私は渋々受け取る。



「き、着替えてくる……。あ、田村、部屋借りるね」
「ああ」



田村の返事を聞きながら、私は田村の部屋へと入った。




 ***




着替え終わり、部屋を出る。その瞬間、何を思ったのか全員が「おお!!」と声をあげた。しかし、田村の私服は私にとってサイズが少し大きかった。でも、問題ない。少し大きいサイズのおかげで、私の胸がなんとか隠れた。ち、小さくなんかないし……。



「髪は私が結ってやろう」
「ういーッス」



立花が私の髪の毛に触れる。左右の横髪を少し残し、他の纏まった髪を器用に櫛で梳く。そして、髪の毛を少し上げられ、髪紐で結われていく。ほんと、立花は器用だ。ちなみに髪紐の色は紫らしい。しばらくじっとしていると、「出来たぞ」と立花に言われた。すかさず「ありがとう」とお礼を言う。



「あとは眉毛だな。お前の短くて細い眉毛を長くしなければ」
「眉毛、書くの?」
「ああ。前髪、少し退かすぞ」
「ん」



立花の手が私の前髪を横へ退かす。それにより、私の眉毛があらわとなる。立花の手には眉墨がついた筆。その筆で、私の眉毛を書いていく。



「……よし、書けた。これで多少は男っぽく見えるだろう」
「おお、さすが」



立花に手鏡を渡され、自分の顔を見る。おお、眉毛がちゃんとある。それに、なんだか男っぽい。ふと、皆が何も話していないことに気が付いた。皆を見ると、何故か私と立花以外の全員が私と立花を見ていた。七松は何故か不機嫌のようだ。立花が不思議そうな顔で、「どうした?」と皆に聞いた。すると、善法寺が苦笑しながら「えっと……」と言葉を濁した。しかし、口を開いた。



「――…二人って、だいぶ仲が良いよね」



(……え、無くね? by.秋奈)
(……無いな。by.仙蔵)
((((いやいやいや、絶対あるって!!))))




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