28


「フン、良い眺めだな」
「お黙り」



あの後、七松に連れてこられた私は会議室へと来た。そこには各委員長と委員会の中でもう一人ずつ、生徒達が集まっていた。つまり、各委員会から二人選抜されて会議室へ来たことになる。痛い視線に耐えられず逃げようとしたけれど、七松に捕まった。そして、強制的に座らせられたかと思ったら、七松が後ろから抱きついてきやがった。つまり、逃げ道が無くなってしまった。そのことに、久々知も尾浜も察したように苦笑する。



「秋奈、ご苦労様」
「どうもどうも」
「久々知!! 人の妻を呼び捨てにするな!!」
「あ、無視して良いからね。勝手に言ってるだけだから」
「え……、あ、ああ……」



後ろから七松がごちゃごちゃ言っているが、無視だ。このままずっと相手していても仕方がない。「始めて良いか?」と立花に聞かれ、「良いよ、ごめんね」と謝る。普段ツンツンしている私が素直に謝ったせいか、何故か驚かれてしまった。おい、そんなに不思議なことだろうか。私だって謝るときはちゃんと謝るんだぞ。そんなこんなで、委員会の会議が始まった。どうやら最近、どの委員会もお金をよく使っているらしい。その為、予算が減っていっているようだ。うんうん、お金は大事だよね。




 ***




しばらくして、会議が終わった。ほとんど潮江文次郎の説教だったけれど。会議が終了してもなお、皆はこの場にとどまって自由に喋っている。会議中、私はなんだか居心地が悪かった。私本当は無関係なのにィィイ!!! ……なんて、今更言ったって遅いだけだ。



「ねえ秋奈、今度一緒にお団子食べに行かない?」



七松から逃れられずにボーッとしていると、ニコニコした尾浜が話しかけてきた。お、おおおおお団子だとォォオオ!!? 最近食べていなかった団子。尾浜のある意味甘い言葉に誘われて、私はすぐに「行く!! 是非!!」と言う。



「お饅頭とかどら焼きとかでも良いのよ……!!」
「あは、もしかして俺の奢りとか?」
「もちろん!!」



奢りじゃなかったら行かないよ。



「秋奈のケチー」
「ハッ! 誰の姉だと思ってやがる。きり丸の姉だぞ」
「でも義理じゃん」
「良いの! 姉は姉なの!」
「意地はっちゃって」



そう言いながらも笑っている尾浜。「うるせ」と、尾浜の頭を軽く叩く。すると、尾浜はわざとらしく「いてっ」と言った。ふと、私を抱きしめる七松の力が強まった気がした。そのことに違和感を覚え、「七松?」と心配して声をかける。しかし、返事が返ってこなかった。尾浜も、きょとん、としている。
すると…――、



「ヴー……」



七松が唸った。私は驚いて固まる。尾浜も驚いているようだ。え、ちょ、なに。どうしたの、寝てるの、唸ってるの、どっちなの。



「……尾浜……、」
「は、はい……!」
「秋奈は私の妻なんだぞ」
「え、えっと……」



七松の声がいつもより低い。しかも、微かに威圧感が……。尾浜が冷や汗をかいている。
ふと視線を感じて、そちらへと目を向ける。そこには、楽しそうに私を見ている立花がいた。「助けてよ」と、そんな意味を込めて、立花を睨む。しかし、立花は「頑張れ」と声には出さずに口パクで言った。あんにゃろォォオ!!! 次に、中在家を見る。中在家は七松と同室だから、なんとかできると信じてる!! ……だが、目を向けた瞬間に逸らされてしまった。善法寺は……、不運だからなんとかできないだろう。私は目線を向けたが、すぐに逸らした。善法寺が「ひどっ!!」と言ってるが気にしない。



「七松、」



自分でなんとかするしかない。そう思い、七松に話しかける。



「――…私は、笑ってる七松が好きだよ」



そう言って、頑張って頭上にある七松の頭を撫でる。ふはははは。皆さん忘れているだろうが、私は生徒達より年上なんだよ。ドヤァ。私の年上っぽいところ見せたでェェエ!! …………あれ? 何故に皆さんは私を見てびっくりしてらっしゃるの……?



「〜〜っ秋奈、愛してる!!!!」
ぎゅぅぅう
「うっ!! ちょ、吐く……! !つか、それは好きな人に言いなさ……うぷっ……」



あ、吐きそう。




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