27


部屋に戻ってみると、乱太郎が横になって寝ていた。ゆっくり近づき、寝ている乱太郎の横に座る。そっと優しく頭を撫でる。乱太郎の髪の毛はふわふわしていて、とても気持ち良い。



「ん、むう……? 秋奈、さん……?」



私の手の感触で起きてしまったのか、手で目を擦って、上半身を起こす乱太郎。まだ眠そうな顔をしている。慌てて「ごめんね、起こしちゃって」と謝るけれど、乱太郎はその言葉には返事をせずに「秋奈さん、大丈夫……?」と寝ぼけながらも聞いてきた。その言葉に、私は「え……?」と呟いてしまう。



「家族の話をしたとき、悲しそうな顔をしてたから……」
「……乱太郎……」



心配そうな顔で、私を見る乱太郎。乱太郎の言葉に、私は表には出さなかったけど内心は驚いた。……乱太郎は、心配しなくていいんだよ。私の問題なんだから。ごめんね……、気を使わせちゃったね……。



「乱太郎は、優しいね。大丈夫、ありがとう」
「そっか、良かったあ」



へらっ、と笑う乱太郎。きっと、乱太郎はまだ少し寝ぼけている。「眠い?」と聞くと、「うん」と頷く乱太郎。



「まだ寝てな?」
「秋奈さん、行っちゃうの……?」
「乱太郎が寝るまで、そばにいるよ」
「ん、そっか」



起こしていた上半身を寝かせる乱太郎。頭を撫でると、乱太郎の目が閉じられた。優しく手を握ると、乱太郎も握り返してくれる。その姿に、私は笑みを漏らす。忍たまといえど、まだ10歳の子供。とても可愛らしい。「おやすみ、乱太郎」と言うと、「おやひゅみ、なひゃ、い……」と可愛い返事が返ってきた。しばらくすると、乱太郎の寝息が聞こえた。寝ているのを確認し、乱太郎を起こさないようにゆっくりと手を放す。夕飯時に起こしてあげないとね。




 ***




やることもないので、適当に廊下を歩く。まあ、散歩というやつだ。庭に目をやると、ヘムヘムが掃除をしていた。あやつ、なんでも有りか……!! 是非ともヘムヘムを私の夫にくだsゲフンゲフン。いきなり、「秋奈ー!!」と何かが私の腰に巻きついてきた。私はびっくりして肩を震わせる。剥がそうとしても、ガッチリ絡まっていて剥がせない。でも、声からして誰が私の腰に抱きついているのかが分かる。この声は、うん、七松だ。



「うわー!! うわー!! 何!!? 何が起きたァア!!?」
「私はお前の夫だ!!」
「私の夫はヘムヘムだァア!!」
「何!!? いつの間に結婚したんだ!!?」
「真に受けんなよ!! ギャグだよ!!」
「お前の夫は此処にいるぞ!! さあ、今から夜の営みでもしようか!!」
「今昼間ですけどォォオ!!? それに私がいつお前と結婚したんだ!!」



いい加減放してくれないだろうか。このままの体制はキツい。向こうも絶対にキツい……、はず。一度冷静になって「とりあえず七松、離れようか」と言うけれど、「嫌だ」と笑顔で言われてしまった。なにゆえ。



「騒がしいと思ったら、小平太が秋奈ちゃんに抱きついてたんだね」



その時、善法寺が苦笑しながら歩いてきた。それと、善法寺の隣にはイケメンがいる。名前は忘れたけれど、確かに見た事がある人物だ。私が助けを求めるより先に、善法寺が「紹介するね、僕と同じ六年は組で同室の、食満留三郎だよ」と隣のイケメンを私に紹介した。食満留三郎は「どうも」と私に軽く頭を下げ、私も「あ、宜しくお願いします」と軽く頭を下げる。



「秋奈ちゃんってば、初対面には必ず敬語だね」
「いやはは、第一印象は大事だよ」
「僕達生徒はみんな年下なんだから、最初から敬語じゃなくても良いんだよ?」
「んー…、うん。気が向いたらね」
「気が向いたらって……」



善法寺が私の言葉に苦笑する。食満はなんだか、私の様子をうかがっているようだ。警戒心が強い、のかな……?



「小平太、そろそろ各委員会が集合する時間だから行かないと」
「ん? じゃあ、秋奈も連れてく!!」
「はあ!!?」
「さあ、行くぞ秋奈!!」
「え!? 本人の拒否権無し!!?」



私の腰から離れ、手を掴む七松。そして、そのまま私を連れて走ってどこかへと向かった。え、ちょ、待っ……!! 早いよ馬鹿!!



「と、止まっ……!! ギャァァアアアアアア!!!!」



最終的には自分の体が浮いていました。




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