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どうも、私は変装の名人・鉢屋三郎。
私達五年生と四年生、そして六年生の一部は「天道秋奈」という女の監視をしている。理由は、怪しいから。ちなみに六年生の一部というのは、潮江文次郎先輩と食満留三郎先輩の二人だ。学園長先生に、あの女のことを紹介され、「未来から来たようじゃ」と言われてしまっては、疑う他あるまい。土井先生ときり丸の同居人なのは本当らしいが。
その女は今、立花仙蔵先輩と七松小平太先輩と朝食を食べている。全く、何故あの二人はあの女と関わっているんだか。とりあえず、私たちは天井裏から監視を続ける。



「そうだ秋奈、昨日はありがとう!!」
「え、私なんかしたっけ?」
「昨日の夜、風呂あがりに髪を拭いてくれただろう!伊作もいたがな!」
「ああ、そっか。昨日はあの後、きり丸の寝顔が可愛すぎてずっとニヤニヤs、おい立花、冷めた目で見るなよ」
「気持ち悪い」
「はぁぁあ!!? お前にはきり丸の可愛さが分からんのか!!?」



女の言葉に、私達は全員コケてしまった。音を出してしまい、思わず慌てる。何なんだ、あの女。そんなにきり丸が可愛いのか?とりあえず、あの女がきり丸大好きなのは分かった。
――…その後も、私達の監視は続いた。




 ***




夜になり、私達は留三郎先輩と伊作先輩の部屋へと集まった。伊作先輩は薬を作るとかで、医務室に行っていてこの場に居ない。留三郎先輩の「どう思う?」という問いかけに、田村が「信用できる人じゃないですか?」と言った。それに同意するように、兵助が「土井先生ときり丸と凄く仲良かったしな」と頷く。



「それに、なんかアホっぽそうだったしねー」
「タカ丸、それをお前に言われたら終わりだと思うのは俺だけだろうか……」



少し留三郎先輩に同意してしまったのは、心にしまっておこう。天道秋奈、か。私も、あの女は白だと思う。きり丸と土井先生が大好きなあの女には、この学園に害を及ばすことはないだろう。



「……あの女の行動で、何度コケたことか……!」
「”きり丸の可愛さが分からんのか!!?”の時と、」
「”……フッ、計算は、どうも苦手でね……”の時と、」
「数えんでいい!!!」



とりあえず、その多諸々だ。あの女は訳の分からん言動をする。それに毎回こけてしまった。あっちが気づいてないだけで、私達は五回くらいはコケたことだろう。



「このまま監視を続けても、なんだか無意味な感じがしますね……」
「……確かにな。伊作の奴も、あの女に心を開いてるみたいだし」
「仙蔵先輩と長次先輩も仲良いっていうのが、なんだか妙に説得力ありますしね」



私の言葉に、その場にいる全員が「うんうん」と頷く。その時、勘右衛門が「俺、今度話しかけてみようかな」と呟いた。その言葉に「本気か?」と聞くと、「だって見た目は普通の女の子でしょ? 意外と話が合うかもしれないし」と返事が返ってきた。まあ、確かに良いかもしれないな。その時は私も混ぜてもらおうか。あの女と話すのは楽しみだ。



「皆で集まって秋奈ちゃんの話?」



その時、伊作先輩が障子を開けて入ってきた。留三郎先輩の「おかえり」という言葉に、伊作先輩は笑顔で「ただいま」と言った。そして、医務室で作ったであろう薬の入った壺を部屋の隅に置く。ふと、留三郎先輩が「なあ、伊作」と声をかけ、「天道秋奈はどういう女なんだ?」と聞いた。伊作先輩「え?」と首を傾げる。誰もが伊作先輩へと目を向けていた。



「秋奈ちゃんは、見た目は幼いけど中身はしっかりしてるよ。特定の人には甘えてるみたいだけど」



伊作先輩の言葉に、皆が「ふむふむ」と言った。タカ丸さんは何やらメモを取っている様子。けど、そのメモ用紙がテストの答案用紙の裏だということは言わないでおこう。そういえば、あの女が言っていた「トゥンク」ってどういう意味だったんだろうか。




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