18


あの後、私の部屋を決めることにした。結果……、きり丸、乱太郎、しんベヱの部屋に泊まりすることにした。どうやら、他に空き部屋がないらしい。七松が「私の部屋はどうだ?」と言っていたが、「いやいや、アンタ年頃だろう」と言って回避。とりあえず、きり丸達の部屋に行って荷物を置いてきた。そして、昼御飯を食すべく食堂へ向かった。



「食堂のおばちゃんの作る御飯、凄く美味しいんだよ〜!!」



私の手を引っ張って歩くしんベヱ。うへへ、可愛い。隣にはきり丸と乱太郎。後ろには土井先生達が着いてきている。「今日の昼御飯はー…、」と言葉を区切って、なにやら匂いを嗅ぎ始めたしんベヱ。「何してんの?」と聞くと、「昼御飯の匂い嗅いでるの!」と自信満々に言った。その姿に癒されつつも「そっか」と返事をする。



「あ。今日の昼御飯、唐揚げだ!!」
「しんベヱ、涎垂れてるよ」



涎を垂らすしんベヱに、苦笑する乱太郎。きり丸は「あ、本当に唐揚げだ」と、しんベヱ同様匂いを嗅いでいる。ふむ、唐揚げか。そういえば最近食べてなかったな。



「秋奈さん、唐揚げ好き?」
「うん、好きだよ。美味しいよね」
「だよね!!」



満面の笑みのしんベヱに、私はどうしても頬が緩んでしまう。ふと、「秋奈さんって好きな人いるの?」と乱太郎に急にそんなことを聞かれ、「うおお?」と変な声を出してしまった。好きな人、か……。そういえば、この世界に来て意識してなかったな。うーん、好きな人……、



「いないな」
「じゃあ、どんな人が好きなんですか?」
「何ぃ!!? それは興味深い!!」
「七松割って入ってくんな。……そうだな、わんこ系かな……?」



私の言葉に皆が「わんこ系……?」と、口を揃えて首を傾げた。そう、私の好きなタイプは犬みたいに元気で笑顔が可愛いというか明るいというか、こっちまで元気になるような人。私の説明に、善法寺が「なんか小平太に似てない?」と言うけれど、七松は論外だと思う。



「なんだなんだ。やっぱり私のことが好きなんじゃないか!」
「ちょいちょいちょい、勝手に決めつけないでくれるか頼むから」



七松は確かにわんこ系かもしれない。でも、なんか違うんだよな。私の好きなタイプに当てはまらない。……むしろ当てはまってはいけない気がする。そんなことを話していると、向こう側に「食堂」の文字が見えた。おお、着いたのか。



「おばちゃーん!! ごはーん!!」
「あっ、ちょっ……!?」



しんベヱが食堂の中へと走って行く。手を繋いでいる私は勿論巻き込まれて引っ張られるがまま。食堂の中に入ると、何人もの視線が私へと降り注いだ。うわ、気まずい。しんベヱは私の状況に気づいてないのか、真っ先に食堂のおばちゃんの元へ行った。うん、まあ頑張れ私。後ろからきり丸や土井先生達が食堂に入ってくるのに気づいた。



「あら、あなたが天道秋奈ちゃんね」
「あ、はい」
「あたしは食堂のおばちゃん。宜しくね」
「あ、えっと……、ご迷惑をおかけすると思いますが、此方こそ宜しくお願いします」



ペコ、と軽く頭を下げる。と、食堂のおばちゃんは優しげにニッコリ微笑んでくれた。そして、「はい」と差し出された唐揚げ定食を受け取る。




 ***




皆で仲良く唐揚げ定食を食べている。私の右隣にしんベヱ、左隣に乱太郎。目の前には立花が居る。土井先生ときり丸とは少し離れてしまったけど、同じ机で食べている。……が、たくさんの視線が痛すぎる。注目されるのが苦手な私は、なんともつらい思いをしている。できれば、シュバッ、と逃げ出したい。



「……見られているな」



私の気まずさに気づいているだろうに、立花が私に視線を向けながらそう呟いた。その言葉を聞き、「ちょ、気にしないようにしてたのにっ……」と立花を軽く睨みつけながら言う。



「素人でも分かるくらい視線が突き刺さっているのだから、どうせ気にしてしまうだろう?」
「……ごもっとも」



確かに立花の言い分は正しい。この視線の数、気にしないほうが無理というもの。ふと、しんベヱが私の唐揚げ定食を見ているのに気づいた。しんベヱの唐揚げ定食を見ると、全部食べてしまったようで全て無くなっていた。



「しんベヱ、私の食べる?」
「え、良いの!?」
「良いよ、結構お腹いっぱいだし」



次のしんベヱの言葉を待たずに、私は自分の唐揚げ定食としんベヱの唐揚げ定食を交換した。お腹いっぱいになってしまったのは本当だ。だから、調度良くこちらを見ていたしんベヱに感謝。しんベヱは「ありがとう!!」と私のお礼を言うと、私の食べかけの唐揚げ定食を美味しそうに頬張った。



「天道、たくさん食べないと胸も大きくならないぞ?」
「きり丸、口元にご飯粒」
「無視は良くない!!」
「七松、ご飯粒が善法寺に飛んでる」



その後、騒がしい七松は、土井先生と食堂のおばちゃんに怒鳴られた。




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -