17


忍術学園に戻ってきた。門には小松田さんが居た。私達が出て行った後、どうやら皆は解散したらしい。入門票の名前を代わりに土井先生に書いてもらっていると、小松田さんに「ねえ、秋奈ちゃん」と声をかけられた。小松田さんを見ると、小松田さんはなにやらニコニコ笑っていた。そんなにニコニコしてどうしたんだろう。



「僕のこと、秀作って名前で呼んでよ!」



少し首を傾げているとそう言われ、私は「名前?」と聞き返す。すると、小松田さんは「うん、歳が一番近いからさ」とほわほわしながら言った。確かに、年上の私が「小松田さん」なんて呼ぶのはおかしい。なら、ここは名前で呼ぶしかないな。別に苗字でも良いんだけど。



「秀作、」
「なーにー?」
「しゅーさーくっ」
「んー?」
「秀!! 作!!」
「そんなに名前呼ばれると照れちゃうよ〜」



ああ、お前なんつー可愛いやっちゃ……!! 頭を撫でたい衝動にかられるが、我慢だ我慢。きり丸といい、秀作といい、なんで男なのに可愛いんだ。私が勝手に和んでいると、「そういえば秋奈、」と土井先生に声をかけられた。「ん?」と返答をすると、土井先生は苦笑した。



「――学園長先生に、お前が未来から来たこと話したからな」



土井先生の言葉に私は思わず固まる。秀作は「あ、そういえば、さっき皆を集めて話してたなー」と何かを思い出している。ど、土井先生、アンタ私に相談せずに何してくれとんじゃァ……!! 思わず土井先生を睨むと、「ご、ごめんな?でも、この学園の人達なら大丈夫だと思って」と苦笑しながら言った。



「つか秀作!!? 学園長先生は私のこと皆に話しちゃったの!!?」
「うん。秋奈ちゃんが土井先生達と住んでることと、忍術学園に住むこと、未来からきたこと、ちゃんと話してたよ」
「な、なんてこと……!!」
「みんな驚いてたよ。中には信じられないって顔の子達もいたし」



ああああああ……。ただ平凡に過ごすはずだったのに。これじゃ、いつ殺されるか分からないじゃないか……。……いや待てよ。私には土井先生、きり丸という心強い味方がいる。二人が私を信じてくれるんだから、他の皆も……。



「殺されないように頑張るよ」
「本当にごめんな……?」
「いいよ。きっと、遅かれ早かれ、皆に言うことになってただろうし」



しょぼん、としている土井先生。土井先生に呆れた笑みを浮かべつつも、私はそう言った。すると、土井先生はわしゃわしゃと容赦なく私の頭を撫でる。髪の毛が乱れてしまう。「おい天道!!!」と名前を呼ばれ、土井先生に滅茶苦茶にされた髪の毛を手櫛で整えつつ、声のした方を見る。そこには、私と面識のあるメンバーが居た。つまり、乱太郎、しんベヱ、立花、善法寺、七松の五人。ちなみに、私の名を呼んだのは七松である。



「私達は、お前のことを信じるぞ!!」
「不本意だが、既に信じてしまったからな」
「不本意じゃないくせに」
「私としんベヱは、きり丸と土井先生と仲が良いから最初から信用してましたけどねっ」
「実際、面白い人だしねぇ!」
「あ、勿論僕も信じてるからねー!」



いきなり言われた、たくさんの言葉。私は思わずびっくりしてしまった。こんな怪しい小娘を信じるだなんて……。驚いたけれど、嬉しい。頬が緩むのを感じた。「ははっ」と笑みが零れる。乱太郎、しんベヱ、秀作だけじゃなく、六年生である立花、善法寺、七松まで私を信じてくれるとは思わなかった。



「忍のくせに、信じるの早すぎ」



口では皮肉を言っても、表情はいまだに緩んでいた。あ、秀作は忍じゃなかった。



(秋奈姉、笑ってんじゃん。ニヒヒッ。by.きり丸)
(うるさいよ。by.秋奈)
(良かったな、秋奈。by.土井)
(ふへへ、うん!! by.秋奈)




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