08


弥生さんが働いている呉服屋へ顔を出す。すると、呉服屋は既に営業していて、弥生さんがせっせと働いていた。忙しそうな弥生さんも綺麗だ。ずっと見ていると、弥生さんが私に気づいたようで「あら、いらっしゃい」と声を掛けてくれた。私は「どうも」と軽く頭を下げ、弥生さんに近寄る。



「弥生さん、お願いがあるんです!」
「お願い?」
「はい。わ、私を、雇ってみる気ありませんか……!?」



私の言葉に、弥生さんが思わず「へ?」ときょとんとしている。確かに、こんなことを言われたらきょとんとするに決まってる。私は付け加えて「バイト、させてほしいんです」と言う。その言葉を聞き、弥生さんは「ああ、そういうことね」と納得する。



「良いわよー!# #NAME1##ちゃんが看板娘になってくれるなら、うちも繁盛するわ!!」
「え!? 本当ですか!?」
「ええ、ちょうど人手が足りなくてね。夫が足を骨折しているものだから」



そう言って苦笑する弥生さん。ほほう、弥生さんは夫がいるのか。是非とも見てみたい。そう思っていると、弥生さんは「娘もいるんだけど、もう嫁ぎに行っちゃって」と言った。……弥生さん、綺麗だけど一体いくつなんだろうか。三十代だと思っていたけれど、娘さんが嫁ぎに行ってるってことは四十代は行っているのかな……。



「それで、いつからバイトする?」
「えっと、じゃあ明日から」
「ん、分かった。明日からよろしくねっ!!」



ニッ、と笑って言う弥生さん。歳を感じさせないほど綺麗な笑顔だ。私も笑顔で「はいっ!! こちらこそ!!」と元気よく言った。これで、お金の心配は少し薄れたかな。




 ***




「――ってことで、バイト先確保した!!」
「どういうことかは分からないが、とりあえず良かったじゃないか」
「うん!!」



あの後、弥生さんと別れて土井先生の長屋へと帰ってきた。そして、バイトのことを報告した。土井先生は嬉しそうな私の顔を見て、私の頭を撫でる。と、そのとき、土井先生が懐から一枚の紙を出して私に差し出した。



「此処から忍術学園への地図だ。何か問題があったら来なさい」



そう言う土井先生から紙を受け取り、紙を見ると確かに忍術学園への道のりが書いてあった。ちゃんと事細かに書いてあり、少し不安ではあるものの、この地図ならなんとか忍術学園に辿りつくことが出来そうだ。土井先生の言葉に「うん」と頷き、「寂しくなったら忍術学園に行く」と言う。



「こらこら。問題あったらって言っただろう? たまに帰ってくるから」
「たまにって言っても、どうせ来れないんでしょ……?」



ムスッとしながら言う私に、土井先生は「そうだなあ……」と苦笑しながら言う。そして、すぐに思いついたように「60日に1日帰ってくるよ」と言った。けれど、私にとってそれだけでは足りない。



「30日に1日」



私の言葉に、土井先生は「え」と固まる。土井先生は教師だし、流石に30日に1日はキツいだろうか。でも、私は30日に1日帰ってくるだけでも寂しい。「やっぱり駄目?」と聞くと、土井先生は呆れたように笑い「分かったよ」と言ってくれた。その言葉を聞き、私は「土井先生さっすが!!」と土井先生に抱きつく。土井先生は急に抱きついた私に「うわっ!!?」と驚きながらも、しっかり受け止めてくれた。



「あーもー。いつも無防備に男に抱きついてるのか?」
「そんな馬鹿な。土井先生は家族だから良いの!!」
「まったく……、他の男にやるんじゃないぞ?」
「やらないよ、天然とか痴女じゃあるまいし」



私は天然でも痴女でもない。でも、土井先生はお兄ちゃんみたいだから、もはや家族として見ている。



「土井先生、早くお嫁さん見つかると良いね」
「……余計なお世話だ」




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