Act.47

「御剣さんマジパネェ。パなすぎる」
「乾君、無理してそういう言葉使うのやめときな?」
「それは草」
「不二君もね」



朝から乾君と不二君に絡まれて困る。朝食食べた後で良かった。でもさっきまで一緒にいた夏菜は「用事あるからアデュー」と言って逃げたけど。用事なんて無いだろ、知ってるんだぞ。
明らかに面倒くさそうな表情を浮かべる私に気づきつつも、乾君は”乾ノート”を開いた。



「君と仁王の関係について聞きたくてね」
「勝手に付き合ってる噂流した人が何言ってるの」



乾君の言葉に返事をすると、乾君も不二君も「てへ」と言った。可愛くない。



「ごめんごめん、2人ってお似合いだよねって話してたら、聞いてる人達が付き合ってるって勘違いしちゃって」



苦笑しながら謝る不二君。だが許さん。
その時、ちょうど近くを幸村君と白石君が通ろうとしていた。「ねえ2人ともー」と声をかけると、2人はきょとんとしながら、足を止めて私を見る。



「この2人あげる」



不二君と乾君を指さしながら言うが、幸村君は笑みを浮かべながら「いらないよー」と言った。くっ、断られてしまうとは。しかし、白石君はこの状況を面白いと思ったのか、笑いながら「何の話しとるん?」とこちらに歩み寄ってきた。それによって幸村君もこちらに歩いて来る。



「御剣さんと仁王の関係について聞こうとしていたところだ」



乾君の言葉に、白石君は「おもろそやなあ」と笑った。



「クラスが一緒なんだよね」
「うん、そう。でも話すようになったのは最近だけど」



幸村君の言葉に返事をすると、乾君が眼鏡をクイッと上げて「興味深い」と言った。私の言葉は不二君と白石君も意外だったようで、「へえ」と声を揃えた。



「おはようさん」



その時、誰かに声をかけられた。その声の主を見て、乾君、不二君、白石君の目が輝く。タイミング悪いよ。なんて思いながらも、「おはよう」と返事をする幸村君に続き、私も「おはよう」と返事をする。声の主、仁王は私達を見て「意外な組み合わせじゃの」と言った。



「良いところに! 早速、仁王と御剣さんの出会いについて聞いても良いかな?」



わくわくしながら言う乾君。ちら、と仁王を見ると、仁王も私に視線を向けた。



「3年になって初めて同じクラスになったんじゃったっけ?」
「うん。でもクラス同じになる前から仁王のことは知ってた。有名だったから」



「まあ仁王だけじゃなくて丸井達もなんだけど」と付け足す。
私達の会話を聞いた幸村君は、「俺達モテるからねえ」と笑いながら言った。自覚あるんかい。一方で乾君はノートをガガガガガッ!と書き、不二君と白石君は「うんうん、それで?」と続きを促す。



「え、でも話す時って、朝たまたま会ったら”おはよう”って言うくらいだった気がする」
「おー、そうじゃな。それくらい」



しかも朝会うのってあんま無いし、あっても1か月に1回あるかないかくらいだった。挨拶したらすぐ離れるし、他のことで話しかけたことも、話しかけられたこともない。



「……じゃあなんでコンビニで話かけてきたの?」



素朴な疑問を仁王に聞く。すると、仁王は言いづらそうに視線を落とした。私の言葉に、不二君が「コンビニって?」と聞いてくる。
普段話さない私と仁王。ある日、学校帰りのコンビニで、たまたま会った仁王が話しかけてきた。スルーされるものだと思っていたから衝撃的だったのを覚えている。それで、それから飲み物を何にするかで話して、そのことを境に普通に話すようになった。



「なにそれ! それは気になるね!」
「仁王が自分から積極的に話しかけに行くなんて珍しいね」
「やっぱりそうなん!?」



不二君、幸村君、白石君の視線が仁王に注がれる。仁王は居心地が悪そうに、首を裏をさすった。



「初めて挨拶した時のこと覚えちょる?」



始めて挨拶した時? 「いや全く」と即答する、仁王は少し口を尖らせた。え、何かあったっけ?



「おまんだけじゃった。ちゃんと目を見て、はっきり挨拶してくれたんは」



他の女子は、皆くっついてくるか目を逸らす。あと声が普通より高くなってる。
そう言う仁王。しかし、いくら記憶を辿ろうとしても、仁王と初めて言葉を交わしたときのことが思い出せない。それに、猫撫で声を出さずに普通に接してくれる女子はそこらに居るだろうに。
ピンと来ていない私に気づいたのか、仁王は「なんじゃ、覚えとるんは俺だけか」と呟いた。



「それから仲良くなりたいと思っちょったけど、おまんの周りには誰かいるから、コンビニの時がチャンスだったぜよ」



あー、まあ、学校の時は夏菜とか友達と一緒に居るからなあ。コンビニの時は1人だったし、話しかけるチャンスではあるか。そんなに私と仲良くなりたかったのは謎だけど。



「そんな仁王に対して、御剣さんは?」
「あー、……ごめん、私は苦手だった」
「ピヨッ!?」



幸村君の問いに正直に答えると、仁王が明らかにショックを受けてしまった。慌てて「前は! 前はね!? 今は大丈夫だから!」と言う。本当に、今は苦手意識持ってないから!
「これはキツイでえ」と仁王を見ながら不憫そうに言う白石君。不二君も「御剣さん酷い」と言った。いや、あの、ご、ごめんて!



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