Act.45

夜になり、新しく財前君と日吉君をまじえ、いつものメンバーでゲームを始めた。


「ちがっ、駄目! そうじゃないっ! うわあーっ!」



死。
たった一言、その文字を見るだけで切原君が操作する主人公が死んだことが分かる。原因は、敵を倒す武器の選択ミスだ。適した武器で倒さなければ、敵は殺せない。「南無」と手を合わせると、切原君は「ミスったあー!」と嘆いた。



「ちゃんとヒントがあっただろ」
「わーかってるよ! 焦りすぎて間違えっちゃったの!」



冷めた目で見る日吉君に、切原君は言う。言い方が可愛い。
その時、私のスマホの通知音が聞こえてきた。ぎゃーぎゃー騒いでいる切原君をよそに、スマホを手に取って画面をつける。仁王からメッセージが来ていた。
”ん、平気”
そう書かれた文面に、ホッと安心する。実は先程、仁王に「体調どう?」というメッセージを送ったのだ。これはその返事。



「それと、地蔵を壊したらあかん言うとったやろ」
「え、無理じゃね? 攻撃するとき地蔵に当たるじゃん」
「それを上手くやんねん」



財前君と切原君の会話を聞きながら、仁王に返事をしようとする。だが、返事をするよりも先に「そっち行って良い?」と送られてきた。同室の柳生君に部屋を出る許可でも得たのだろうか。とりあえず「大丈夫そうなら」と送っておいた。



「そもそもなんだよ、八尺様ってー…」
「ぽぽぽって笑い方も不気味だよな」



すっかり戦意喪失する切原君に、桑原君は苦笑しながらも言った。



「はい、交代! 誰か交代!」



コントローラーを天高く上げ、そう言う切原君。余程自信があるのか、日吉君が「貸せ」とコントローラーを手に取った。改めて、自動オートセーブされたところまでストーリーが戻り、再開される。八尺様とのバトルが開始される直前のようだ。日吉君なら、今まで進めてきたストーリーの中で倒し方を確信しているから、八尺様を倒せるだろう。



「で、盛り塩を置いて、お札を、あ、」



順調に倒すアイテムを選択していく日吉君だったが、ゲームに不慣れだからなのか、お札を選択する前にバトルを開始してしまった。



「やーい! 間違えてやんのー!」



選択ミスを切原君が嬉しそうに煽り、再び”死”の文字に「あ、死んだ」と桃城君が言う。隣にいる夏菜が「煽らない煽らない」と苦笑しながら切原君に言うが、切原君は「だってこいつが先に馬鹿にしたんスよー!」と日吉君を指さした。日吉君は切原君の言動を気にしていないようで、また八尺様とのバトルを始める。
それにしても喉が渇いた。



「飲み物欲しい人手ー挙げてー」



私の言葉に、切原君と桃城君が真っ先に「はーい!」と手を上げる。それに続き、夏菜、桑原君、財前君も手を挙げる。そして、ゲームをしている日吉君も。



「じゃあ適当に買ってくる」
「俺も行く」
「お、ありがとう」



桑原君の申し出をありがたく受け入れ、2人して立ち上がる。飲み物を何にするかだなあ。夏菜の「行ってらっしゃーい」と言う言葉に、「行ってきまーす」と返事をし、桑原君と一緒に歩き始める。



「あ、そうだ、仁王の分も買わないと」
「部屋行くのか?」
「ううん、さっきこっちに来るって連絡来たから」



私の言葉に、桑原君は「え、あいつ大丈夫なのか……?」と呟く。やっぱりそう思うよね。完全に治ったかは分からないし。で、仁王が加わると、飲み物は全部で8本欲しいのか。夏菜の好みは把握してるけど、他の皆の好きな飲み物って何かなあ。
桑原君と会話をしながら歩くこと数分。自動販売機の前に着いた。



「私と夏菜はオレンジジュースー」
「あ、じゃあ赤也もオレンジ。俺はカフェオレ。桃城達はどうする?」
「んー、無難なやつってなにかなあ」



お茶とか?



「いっそのこと、全員分、目瞑って押してみるか?」
「え、ロシアンルーレットみたいな?」
「おう。あとはジャンケン順で好きなの決めようぜ」
「良いね、面白そう」



なんとしてでもジャンケンに勝たねば。
目を瞑ってボタンを押す役目を桑原君に任せ、私はお金を入れる役目をする。どれでも選べるようにお金を多めに入れて、目を瞑っている桑原君に「OK!」と声をかける。桑原君の指は、どこらへんを押そうと狙いを定め、ボタンを探し始めた。



ゴトンッ
「お、やりぃ! オレンジジュース!」



落ちてきたオレンジジュースを取り、またお金を入れる。そして、また桑原君に声をかけた。
繰り返すこと数回。人数分の飲み物を確保した為、桑原君に「目開けて良いよー」と言うと、桑原君は瞑っていた目を開けた。床に置いている飲み物の数々を見ると、桑原君は「うわ」と顔を引き攣らせる。



「カレーラムネなんてあんのかよ……」
「不運は誰だろうね」



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