Act.44

観月君が榊先生に呼ばれ、別の仕事をするということで、私は観月君から解放された。その為、少しの間だが、約束通り朋ちゃんとお喋りをすることに。本当は長いこと話していたいんだけど、朋ちゃん達ももうすぐ仕事を再開する時間らしい。



「これ、希代さんにどや?」
「凄く良い!」



で、今はファッション雑誌を見ながら女子トークに花を咲かせている。友香里ちゃんが私に似合いそうだという服を指さし、杏ちゃんも賛成した。どれどれ、と見てみると、黄色の膝丈フレアスカートだった。え、これ?



「黄色……、黄色かあ……」
「あかんですか?」
「変に目立たないかなあ……」



黄色の小物は身に着けることあるけど、スカートでは黄色を選んだことが無い。なんとなく、なんとなくね、派手というか、凄く目立っちゃうんじゃないかなって思っちゃう。
私の言葉に、友香里ちゃんは「えー!? かわええやないですかー!」と言った。



「黄色って夏にぴったりじゃないですか! 明るくて!」
「せや! 仁王さんも惚れ直しますって!」



朋ちゃんと友香里ちゃんの気迫が凄い。……ん? 仁王?



「仁王が惚れ直すってどういうこと?」



そう聞くと、友香里ちゃんは「しまった」とでも言いそうな表情を浮かべた。朋ちゃんも「あちゃー」と言い、杏ちゃんと桜乃ちゃんは苦笑している。
え? それってあれ? 不二君と乾君が言ってたってやつ、友香里ちゃん達も知ってるってこと?



「私と仁王、付き合ってないよ」



私が言うと、友香里ちゃん達の時間が一瞬止まったかのように見えた。そして、不自然に笑みを浮かべる。



「そ、そうなんですかあ〜!?」
「なんだ、デマかあ〜!」



桜乃ちゃんと杏ちゃんが言う。なんかおかしいけど、誤解が解けたようで良かった。全く、2人の噂は一体どこまで広がってるんだか。そんなことを思ったが、友香里ちゃんと朋ちゃんが「なんや勘違いしとるようで良かったわ」「ですね」と小声で会話をしていたことを私は知らない。



「あ、そろそろやらなきゃ」



杏ちゃんが時計を見て言う。えー、もう? でも、仕方ない。



「じゃ、私も戻るね」



そう言いながら立ち上がる。
「もっと話していたかったのにー」と口を尖らせて言う朋ちゃん。桜乃ちゃんも「ねー」と朋ちゃんの言葉に頷いてくれた。ここは天使しかいないのか。「また後で話そうね」と言うと、4人とも「はーい」と元気良く頷いた。
4人にデレデレしながら部屋を出る。



「あ、希代」
「夏菜」



部屋を出てすぐ、夏菜に会った。そっか、そら時間になったら戻ってくるわな。



「休憩時間、ここにいたの?」
「うん、観月君の手伝いしに。ま、榊先生に呼ばれて行っちゃったけど」



夏菜の言葉に返事をする。私の言葉を聞き、「へえ、意外な組み合わせ」と驚いた。確かに、今日まで何の関係もなかったしね、私と観月君。夏菜と仲が良いのは知ってたけど。でも、思いのほか話しやすかったし、居づらさは無かったかな。



「私が希代と話したかったのに」
「あれ? でも幸村君と話してなかった?」
「話してたけど、本当は希代に会いに行く為に外出たんだよ」



「それなのに、希代ってば居なくなってるんだもん」と不満そうに言う希代。あ、あらー、そうだったのかー。タイミング合わなかったなあ。まさか夏菜も、私が呼ばれて中に入ってるとは思わなかったのかな。いつも外にいたし。



「ま、いっか。あたしは部屋一緒だし」



そう言う夏菜に、「相思相愛だもんねー」と言うと、「当たり前でしょー」と笑いながら返ってきた。合宿が終わっても、学校で会えるし、なんなら休日も会おうと思えば会えるし。
今の会話で機嫌を戻したのか、夏菜は「あとでね!」と笑みを浮かべながら言うと、部屋の中に入って行った。
さーて、私も戻らないと。



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