Act.43

「だからちょっと待っててってば! せっかちさんめ!」
「貴女がぐずぐずしているからでしょう!」



でえええい、うるさい!
私と観月君の作業は、最初は順調だった、最初は。ただ、だんだんと観月君のデータ入力に、私のデータを探す手が追い付かなくなってきて、観月君に急かされ続けて今に至る。今日初めて話したとは思えないほど、観月君には言いたいこと言えるの不思議。



「あかん、おもろい。2人のことブログにのせてもええですか?」



ちょっ、財前君なに言ってんの!?
私が言うよりも先に「駄目です!」と観月君に言われ、財前君は「ちぇー」と口を尖らせる。本気で喧嘩をしているわけではないとはいえ、私と観月君のやり取りをブログに書かれるのはさすがに恥ずかしい。



「あ、あの、私手伝いましょうか?」



桜乃ちゃんの申し出に、すぐに「いや」と手で桜乃ちゃんを制する。



「それは観月君に負けた気がしてムカつく。でもありがとう」



私の言葉に、桜乃ちゃんは苦笑して「そうなんですか」と言った。ただし観月君、今鼻で「ふんっ」て笑ったのは聞き逃さなかったぞ。
一応竜崎先生には「観月君の手伝いをしています。何かあれば呼んでください」とメッセージを送ってあるから、お呼びがかかるまでは此処にいるつもりだ。なんとしてでも巻き返さないと。



「まだですか、早く」
「歌でも歌ってな」
「僕の美声を聞いたら手を止めてしまうでしょう」
「何それ笑うわ」



「ははっ」と笑うと、頭にチョップをかまされた。痛っ! 財前君笑ったな?
そんなこんなで、観月君が探している選手のデータを見つけ、観月君に渡す。観月君がデータを入力している間に、次の選手を予想して見つけてしまおう。えっと、今やっているのが海堂君で、そうなると同じ青学か同じ2年生の人が来るかな? ということは、桃城君の可能性が高い。よーし、桃城君はどこだー?



「はい次、鳳君」



違うんかい! 惜しいけど!



「そや、御剣さん、今日のゲームって何やるんすか?」



財前君の言葉に、意外にも早く見つけた鳳君のデータを観月君に手渡しながら、財前君に顔を向ける。今日のゲームって、いつも切原君達と夜にやってるゲームのこと? 昨日は話題のフリーホラーゲームをいくつかクリアしたから、今日は製品版のホラゲーをやろうって話してるんだよね。



「なんだったかな、タイトル忘れたけど、都市伝説の謎を解明してくぜっていう謎解きホラゲーやろうかなって」



”都市伝説”という言葉に、日吉君がピクリと反応した。



「俺も一緒にやって良いですか?」
「なんやねん、俺の台詞やぞ」



日吉君と財前君の言葉に、なるほどね、と納得する。財前君はゲームが好きだって切原君が言ってたし、もしかしたら私達がやってるところをずっと見てたのかもしれない。私と財前君、接点なかったからなあ。日吉君にいたっては都市伝説に関連するゲームだから気になるのかもしれない。



「良いよ、やろう! 19時からやるから、来たい時に来て!」
「はい次、大石君」
「あ、はい」



観月君容赦ないね。



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