「御剣さん、仁王君が御迷惑をおかけして申し訳ありません」
あれから仁王と少し話して、グラウンドに戻ると、柳生君に声をかけられた。どうやら選手達は30分間完走を終えていたらしく、散り散りになって息を整えている。
「昨夜、お風呂上がりに髪を乾かさずに寝てしまいまして……、注意はしたのですが……」
なるほど、それで風邪をひいてしまったわけか。スポーツをやってるんだから体調管理はちゃんとしているものだと思っていたけど、これは私の偏見だったのだろうか。それとも仁王だけ?
柳生君は余程呆れているのか、眼鏡をくいっと上げると「はあ……」とため息をついた。
「仁王のやつ! たるんどる!」
おっと真田君。
いつの間にか私の隣にいた真田君の言葉に、柳生君は「全くです」と首を縦に振った。柳生君って仁王に対して辛辣だね?
「御剣、世話をかけたな。例を言う」
「いやいや、そんな。気づいたの滝君だし」
苦笑しながら言うが、真田君は「看病をしたのはお前だろう」と言った。真田君って大人だなあ。そんなことをしみじみ思っていると、柳生君も「私からも、ありがとうございます」とお礼を言われた。いや、ほんと、そんなに大したことはしてないって。
「今幸村君に説教をしに行ってもらっていますから、これで懲りたでしょう」
ひえっ、幸村君が説教してんの? 仁王のメンタル、大丈夫かな……。
「御剣さん、仁王君、大丈夫やったか?」
そんな時、ひょこっと白石君が顔を出した。驚きながらも「うん、大丈夫そう」と言うと、白石君は安心したように「ほな良かったわ」と微笑んだ。白石君めちゃくちゃかっこいいな。こりゃ絶対モテるわ。
ふと、白石君が私の顔をじっと見ていることに気づいた。え、もしかして化粧崩れしてる? そんな私の不安をよそに、白石君はふっと笑った。
「御剣さん、ほんまに仁王君のことが好きやねんなあ」
…………えっ?
「な、なななにを、好き、などとっ!」
「そ、そ、それは本当なのですか!?」
私が反応するよりも先に、真田君と柳生君が反応した。真田君は林檎のように顔を真っ赤にし、柳生君は落ち着いているいつもと違って動揺している。なんで2人とも私より大きな反応してるの? って、そんなことよりも!
「何その話初耳なんだけど!?」
私の言葉に、今度は白石君が「えっ?」と驚いた。
「ち、違うん? 付き合っとるって聞いたんやけど……」
「ない! 誰に聞いたの!?」
「ふ、不二君と乾君が話しとったで」
あの2人かあああああ!
くるっ、と3人に背中を見せると、柳生君が「ど、どちらに?」と聞いてきた。私は振り返り、言う。
「あいつ等シメてくる」
私の言葉に、3人とも引き攣った表情をあらわにした。今の私なら、銃で無双できる気がする。
結局、不二君と乾君にはこちょこちょの刑に処した。2人とも大いに笑い転げた後、きちんと謝罪してくれた。また何かやらかしたら、こちょこちょの刑に処そう。
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