Act.36

昨夜はゲームを満喫した。夏菜のことは、残念ながら私が寝る頃はまだ山吹の人達と一緒だったようで、私が先に寝てしまったことで誤解は解けなかった。
そして朝。いつも通り先に起きた私が、寝ている夏菜を起こす。今だ、今話すしかない。幸村君にも迷惑がかかるし、なにより夏菜に応援されたら幸村君がショックを受けるだろう。……あれ? 幸村君楽しんでなかったっけ?



「あのさ、幸村君のことなんだけど……」
「んー? らいじょうぶ、誰にも言わないよー」



呂律が回っていないが、着替えながらも返事をする夏菜。



「そうじゃなくて、」
「うん」
「誤解なんだよ、私が幸村君好きっていうのは」



私の言葉に、夏菜は「うん?」と言いながら着替えの手を止めた。私の視線を向ける彼女は、どういうこと?、と言わんばかりの表情を浮かべている。
ひとつひとつ説明をすることにした。私が夏菜と幸村君が仲良いのを見て「幸村君どう?」と聞いたこと。その言葉の意図を勘違いさせてしまい、結果、私が幸村君を好きだと誤解されたこと。



「え!? そうなの!?」



私の説明を聞いていくうちに、夏菜は驚きの表情へと変わっていった。最終的に、「なんだーそっかー」と項垂れる。



「じゃあ代わりに、あたしの好きな人、聞いてもらおうかな」



ふーん、好きな人いるんだ。
……ん? え? ……何ィィイイイイ!?



 ***



「なんじゃ御剣、今日はやけに真面目じゃないか」
「はい、余計なことは考えたくないので」



竜崎スミレの言葉に、キリッとした表情を浮かべて返事をした希代は、その表情のまま次の仕事へと取り掛かった。散らばった球を拾っては籠に入れる作業を始める希代に、スミレは首を傾げる。



「普段はあんなにテキパキ動かないんじゃが……」



ともあれ、しっかり動いてくれるのは良いことだ。竜崎スミレは希代から視線を外し、選手達の指導を再開する。
しかし、希代は動いている間でも、夏菜の好きな相手のことで頭がいっぱいだった。



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