Act.35

素直に。そう、素直に言えば良いだけ。
幸村君のことは友達として好きなだけだ、って。
そしたら、夏菜も誤解だったんだって気づく。簡単なことだ、面と向かってちゃんと言えば良いことなんだから。そう、簡単な、こと……、……。



「なんでこんな時に限って夏菜いないわけ!?」



日中はやる事があるから会話は出来ない、だから夜、一緒にゲームをする時に話そうと思っていたのに。それなのに、夏菜は山吹の人達に連れて行かれてしまった。なんでも一緒にトランプをやるとかで。
あの子がモテるのは知ってっけどさァ! 私の方が夏菜と仲良いのにさァ! ちくしょうがァ!



「落ち着いてくださいよー。俺達が居るじゃないッスかー」



ゲームを準備しながら言う切原君。隣に居る桑原君と桃城君が「うんうん」と頷いている。
……が!



「そういう問題じゃないんだよぉおおお!」
「っわわ!? 何するんスかあ!」



わしゃわしゃと勢い良く切原君の頭を撫でくりまわす。切原君が驚いてコントローラーを落としてしまい、桑原君が「あっ!」と焦り声を出すが、構っていられない。今日はゲームをやめて夏菜の元へ行きたいが、私が行って山吹の人達に邪魔だと思われたらと思うと怖い。
夏菜、誘われたとはいえ、よく男の輪の中に入れるなあ……。断れない性格が災いしたんだろうけど、それで泣きそうになっていないだろうか。



「ま、とりあえずやりましょうよ! 今日は何をするんですか?」



ワクワクしている桃城君の言葉に、「今日はねー」と言いつつ、トートバッグの中を漁る。
夏菜が山吹の人達のところに居るのは仕方ない。何かあればラインを送ってくるだろうし、スマホの音だけ鳴るようにしておけば問題無いだろう。



「じゃん! ケミストリーハザード! の! サイドストーリー2!」



その瞬間、切原君と桃城君の顔が青ざめた。桑原君はどういうゲームか分からないようで、「けみ、え、何?」と首を傾げた。しかし、パッケージを見て察したのか「あ、ホラゲーか」と言う。



「そう怖がりなさんな。2人プレイ出来るし、怖さもそれほど無いから」



ね?、と笑みを浮かべながら言うものの、「先輩怖いッス」と切原君に言われてしまった。なんでや。



「も、勿論御剣先輩も一緒にプレイしてくれるんスよね?」
「え? 私もやるの?」
「じゃなきゃ怖くてできませんよっ!」



切原君と桃城君は青ざめながらも、私に抗議する。マジでそこまでビビらなくたって大丈夫なんだけどな。FPSさえ出来ていれば楽勝だし。
とりあえずPS4にソフトを入れ、ケミストリーハザードを起動する。「ゾンビが出るのかー」とパッケージの裏を見ながら言う桑原君に、「慣れれば平気だよ」と返事をする。



「じゃあ、私2Pにするから、どっちか1Pで」



2つあるうちの片方のコントローラーを、「はい」と言いながら、切原君と桃城君に差し出す。流石に桑原君はまだ見ていたほうが良いだろう。2人はお互いに「お前やれよ」と言い合った後、じゃんけんで負けた桃城君が1Pでプレイすることになった。



「2Pは銃持てないキャラだから。サポートだけだから。頑張ってね」
「ええっ!? そんな、俺1人で倒すってことですか!?」



可愛い子ぶって「ファイト!」とガッツポーズをしながら言うが、桃城君は焦りからなのか「憎たらしいいいい!」と大声をあげた。
苦笑している桑原君の隣で、切原君がホッとしているが、切原君、勿論君にもやらせるつもりだよ。覚悟したまえ。



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