Act.34

仕事を一通り終え、とりあえずは休憩となった。私・夏菜は勿論、日中あまり話せていなかった希代の元へすぐに向かう。
選手達が試合中なので、スコアを書いている希代に、小さく「やほー」と声をかける。希代は、私の顔を見て「やほ」と笑って返事をしてくれた。うんうん、やっぱり希代と一緒に居たいな。



「仕事終わったの?」
「とりあえずね。後でまた出てくると思う」
「ほー。じゃあ、とりあえずお疲れさん」



そう言ってくれる希代に「ありがと」とお礼を言う。いつもなら抱きつくかタックルをかましているところだけど、選手達の前なので自重しておく。流石に皆の前じゃ出来ないからね。



「希代は休憩ないの?」
「午後はずっと試合があるからね。ま、動いてないだけマシ」



確かにそうかもしれないけど……。
「暑いよねえ」なんて言いながら、希代に向けて手をうちわのように扇ぐ。だが、希代は「ぬるーい」と言いながら情けない顔を見せた。思わず笑ってしまう。その顔は駄目でしょ。



「ところでさー、……、」



希代が何かを言いかけて、口を閉じた。言うのをためらっているみたいだけど、どうしたんだろうか。「何?」と聞くと、希代は言いづらそうに口を開く。



「幸村君とさ、今どんな感じ?」



幸村君?
キョトンとしている私に気づいたのか、希代は慌てて「いや、深い意味はないんだけど!」と言う。何故そんなに慌てているのか。私から目を逸らした希代は、再び試合を見始める。しかし、その様子はどこかぎこちない。
……もしかして、希代、



「幸村君のこと好きなの?」



そう言った瞬間、希代がむせた。




 ***




桜乃ちゃんに呼ばれ、夏菜は仕事に戻って行った。
マズイ、非常にマズイ事になってしまった。誤解だと伝えたかったが、上手く言葉が回らず、結局今も夏菜は”私が幸村君を好き”だと勘違いしたままだ。何やら応援されるような雰囲気だったし、早く誤解を解かなければいけない。



「お疲れ様ー」



試合を終えた幸村君と仁王にタオルを手渡す。二人共、お礼を言いながら受け取ってくれた。
二人の試合はとても凄まじいもので、主に幸村君が人間離れしすぎてて怖かった。仁王は負けたのが悔しいのか、ムスッとした表情で「誰が幸村との試合を決めたんじゃ」とぶつぶつ文句を言っている。



「幸村君ごめーん……」
「ん?」
「夏菜にさ、私が幸村君好きだって誤解されてるんだよ、今……」



そう言いながら、ドリンクを幸村君と仁王に手渡す。二人は私の言葉を聞き、キョトンとしながらもドリンクを受け取った。しかし、幸村君はすぐに「ぶはっ!」と笑いだす。



「あははっ! 御剣さん俺のこと好きなの!?」
「や、だから誤解だって」
「ふふ、なんか面白いことになってるね」



全然面白くないよ……。
幸村君は「どうしようね?」と言いながらも、面白いのか笑みを浮かべている。仁王は興味があるのか無いのか分からないが、ドリンクを飲みつつ、私達の話に耳を傾けているようだ。



「御剣さんが俺に振られたか、別に好きな人がいるって言えば解決しそうだけど」
「好きでもないのに振られるのは癪」
「そういう正直なところ結構好きだよ」



さてはそうやって他の女子を落としているな?



「となると別に好きな男がいるってやつじゃが、相手はどうするんじゃ?」
「それなら御剣さんに視線をぶつけてる奴がいるじゃないか」



それってまさか……、葵君?



「却下ァ!」
「あ、やっぱり?」



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