Act.33

「この合宿における彼女にしたいランキングで、御剣さんは残念ながら最下位」
「でも大丈夫、一緒にゲームしたい異性のランキングは最上位だから」



え、何、何なんスか。
午後の練習が始まってからしばらくして、私の前に現れた乾君と不二周助君。二人共、ガッツポーズを作っている。まるで私を励ましているかのようだが、心にグサッと来た。知りたくもなかった情報を教えてきやがって。



「練習してください」



とりあえず、冷めた目で二人を見ながら、わざと敬語で言う。しかし効き目が無いのか、乾君と不二君は「まあまあ」とゆっくりとした物言いで言った。



「僕達の試合はまだ後だからね、休憩もかねて御剣さんと話そうと思って」
「ランキングはその話題作りだ」



話題作りて。私の心が抉られましたけど。乾君は昨日話したばかりだし、不二君に至っては今初めて話したよね? 二人共距離の詰め方早くない?
なんとか二人から逃げようと頭を働かせた時、するり、と二人がナチュラルに私の両隣に来た。あれ、これ、逃げられないように周り固められた?



「あの、私今からスコア付けに行かなきゃいけないんだけど……」



選手達が慣らし運動を終えて、いよいよ試合が始まる時間だし。



「じゃあ僕達も着いて行くよ」



逃げれると思ったのに不二君ドチクショウ! 爽やかな笑顔で言いやがって! 乾君も「そうだな」なんて言っちゃってるし!
どうしようもないので、とりあえず担当のBコートへ歩き出すと、乾君と不二君も着いてきた。まあ、ですよね。




 ***




試合は順調に進んで行った。怪我人は何人か出たけど、幸い掠り傷程度の軽い傷で、体を動かすには問題無さそうだ。
意外にも、乾君と不二君は大人しい。先程のうざい絡み方ではなく、普通に話せる。さっきのは一体なんだったんだ、と思う程だ。……もしかして、本当に私と話そうとしただけだったんだろうか。私を見ながらデータを取る乾君は怖いけど。



「ところで、」
「んー?」



スコアを書いていると、乾君が声をかけてきた。いまだ書き込んでいるスコア表を見ながらも、乾君に返事をする。



「君と仁王は、付き合っているのかい?」
「……、えっ?」



数字を書いている途中だが、手を止めて乾君を見上げる。余程私が驚きの表情を浮かべているのか、「驚きすぎだ」と笑われてしまった。だ、だって、なんでそんな、付き合ってるなんて……。
「違う違う!」と首を横に振ると、今度は不二君が「え、違うの?」と首を傾げた。



「幸村から”仁王は女子が苦手”っていう話を聞いてたんだけど、御剣さんとは普通に話してるから付き合ってるのかと思ってた」



確かに、仁王がまともに女子と話してるのはあまり見たことないけど……。



「だって私、つい最近だよ、仁王と話すようになったの」



そう言いながらも、スコアの続きを書き込む。書き終えて顔を上げると、乾君と不二君が、私の顔を覗き込むようにして私をガン見していた。え、何、怖い。



「その話、」
「詳しく!」



不二君と乾君の言葉に、私は「ええ……?」と困惑してしまった。
その後は、竜崎先生がやって来て「御剣の邪魔をするんじゃない!」と怒鳴り、乾君と不二君を追い払ってくれた。おかげで根掘り葉掘り聞かれることなく、スコアに集中することが出来た。竜崎先生、ありがたや。



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