Act.30

昨夜はゲームメンバーに新たに桃城武君を加え、ゲームを行った。同じ学年だからなのか、切原君と桃城君との争いが凄いこと凄いこと。二人でFPSをやった時には、同じチームであるにも関わらず、どちらのキル数が上なのか競い合っていた。喧嘩するほど仲が良いってやつなのかな?
そして日付を跨ぎ、合宿三日目となった。



「ふふ、粘るね」
「当然!」



朝食を食べて、筋トレを終え、選手達はそれぞれの試合を開始した。今回は効率良くする為、マネージャーの分だけの試合を一度にしている。
私が担当しているのはBコート。現在は青春学園の不二周助君と、六角の佐伯虎次郎君が試合をしている。この試合が一回目なので、順番の遅い仁王が審判をやっていて、私は昨日と同じようにスコア付けだ。



「そろそろ疲れてきてるんじゃない?」
「それはそっちだと思うけど?」



佐伯君と不二君の会話が聞こえる。
あんなに汗をかいていて、しかも動いている最中だというのに、こんなに体力が続くなんて。見入りすぎてしまって、時々スコア付けを忘れてしまっているのではないかと思ってしまう。テニスはやれないけど、見るのは好きだなあ。



「っはあ!」
「っ!」
「ゲームセットアンドマッチ、ウォンバイ不二周助!」



不二君の一球を捉えることが出来なかった佐伯君。結果、不二君が勝ち、佐伯君の負けとなった。二人はお互いに握手を交わし、「良い試合だったよ、ありがとう」「こちらこそ」と会話をする二人は、汗をかいているというのに爽やかそのもの。根の底から爽やかオーラが出てるから爽やかなの?
……おっと、タオルを用意しなくては。



「お疲れ様ー」



スコア表を置き、二人分のタオルを持ち、此方に歩いてきた不二君と佐伯君にタオルを渡し、すかさずドリンクも渡す。「ありがとう」と同時に言われ、ちょっと照れる。いや、二人共顔良いからさ。



「佐伯、交代じゃ」
「ああ、そうだったね」



審判台から降りてきた仁王が、佐伯君にそう言う。タオルとドリンクを持った佐伯君が審判台に上がるのを確認し、次の試合を行う人を確認する。
次は、桃城君と葵君ペア、菊丸君と鳳君ペアのダブルス。お互いのペアが他校同士だが、これで本当に試合になるのだろうか、疑問なところだ。まあでも、監督達が組んだダブルスだから、何か意図があってのことなのだろう。



「よっしゃ桃城さん! 俺達の力見せましょう!」
「おうよ! パワーなら負けねえぜ!」
「あ、あの、俺ちゃんとできるか分かりませんが、頑張ります……!」
「まーまー肩の力抜いて、鳳君! 気楽に行こー!」



葵君と桃城君、鳳君と菊丸君が会話をしながらコートへと入って行く。「よろしくお願いします」と四人がお互いに言葉を交わす。ふと、「英二の奴、大丈夫か……?」「長太郎も心配だぜ……」と菊丸君と鳳君を心配する、大石君と宍戸君の声が聞こえてきた。私も思う。
菊丸君鳳君ペアが先行、鳳君がサーブをすることになった。



「1セットマッチ、鳳長太郎トゥサーブ、プレイ!」



佐伯君のコールによって、試合が始まった。佐伯君の声ハキハキしていてよく通るな。仁王はちょっと気だるげだったぞ。
「一球入魂!」と言いながら、球を打つ鳳君。バゴンッ!、という尋常じゃない鈍い音がして、球が桃城君葵君ペアのコートへと入って行った。今の勢いでボールが壊れないのは、ボールが尋常じゃないくらい固いからなのだろうか。ダイヤモンド?



「早速強烈だな! だけど、この桃ちゃんは折れないぜ!」



またもや、バゴンッ!、という音を出し、桃城君のラケットによって、球が菊丸君鳳君ペアのコートに返っていった。ダイヤモンド? 桃城君が返した球を、菊丸君が「ほいほーい!」と言いながら拾ってまた返す。桃城君の強いであろう球を返すとは、菊丸君も結構力があるのかもしれない。



「ジャックナイフ!」



ドゥンッ!、というまるでゲームの必殺技を出した時のような音がし、球が勢い良く菊丸君鳳君ペアのコートに入る。コート側の菊丸君は反応出来ず、鳳君は反応したものの球に追いつくことが出来ず、球がコートの外へと跳ねていった。



「す、すみません、菊丸さん……」
「うんにゃ、反応出来なかった俺も悪いしね」



鳳君の謝罪に、菊丸君が笑顔でフォローする。「でも対策は必要だよねん」と言う菊丸君に対し、鳳君が「場所を交換してみますか?」と提案した。その言葉に、きょとん、とする菊丸君。鳳君に何かが考えがあるのだろうか。



「この試合に勝ったら、俺は女子マネの誰かに告白される……。勝てなきゃ嫌われる……」



んん?
ふと、葵君がチラチラとこちらを盗み見ていることに気づいた。私と目が合うと、彼はバッと視線を逸らす。そんな私達に気づいたのだろう、桃城君が「御剣さんって特定してんじゃねーか」と苦笑しながら言った。



「剣太郎は自分にプレッシャーをかけることでパワーを発揮するんだ」
「ああ、だからか……」



審判台の上に居る佐伯君の言葉に、納得する。葵君が突然妙なことを言いだすものだから驚いた。思わず苦笑する私に、佐伯君は「でも下心は本当だから」と言った。……聞かなかったことにしようかな。あと隣で「ひゅーひゅー」と言う仁王うぜえ。
サーブ権が桃城君になった。球を打つ桃城君は先程と打って変わり、パワー半減に思える。最初から飛ばすと体力がすぐに無くなるから、慎重にいっているのかもしれない。
あ、やば、スコアつけないと。



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