Act.29

こんにちは、夏菜です。本日も良い天気です。
15時頃に水泳を終え、今はラリー練習をやっております。学校事で円を作るように幅を取って立ち、左の人にラケットで打って球を渡して行く、というルールです。球が落ちた場合は、今度は反対、右の人に渡して行くらしいです。どうやらテクニックを磨く為のようですね。
遊び感覚で出来るのか、選手達はとても楽しそうです。



「そろそろタオル乾いたかなー」
「干してんの?」
「うん。あー、でも流石にまだかー」



選手達が今のラリー練習をしている間、球出しも球拾いも無いから暇だ。やることもだいぶ減る。希代と他愛もない話をしている間、タオルを干していることを思いだしたが、干してからさほど時間は経っていないことに気づく。このままじゃ寝てしまいそうだ。



「仕事どう? 慣れないことばっかで疲れてるでしょう」
「ははっ、それはお互い様でしょ」



私の言葉に、希代が笑ってそう言う。そして「夏菜が居るからだいぶ楽」と呟くように言うものだから、なんだか照れくさくなってしまった。
私は結構ドジなところがあるし、手際も良いほうではないから、ゆっくり丁寧に仕事をやっている。周りにフォローされてばかりなのが気がかりだったが、希代と話しているとそんな事すら忘れてしまえて、気が楽だ。



「御剣さん、スコア集計表よく書けてるって竜崎先生が褒めてたよ」



竜崎先生と話していたであろう河村君が、希代に歩み寄りながら言った。希代は「ほんと? 良かった」と安心した様子で返事をする。スコア集計表……、水泳の時間に希代が書いていた紙のことかな。



「あれね、自信なかったから亜久津君に見てもらったんだよ」
「え……、亜久津が?」



河村君が驚きの表情を見せる。亜久津君って確かに、あの白髪のいかにも不良って感じの人だよね。確かに水泳の時間に希代が亜久津君と話しているのを見た。
意外だったのか、河村君は「亜久津がそんなことするなんて……」と呟く。対して希代は、「そんなに話さなかったけどね」と付け加えた。その時、河村君が何かを思い出したように「あっ!」と声をあげた。私も希代も、ビクッと肩を震わせる。



「そうだ、桃が御剣さん達とゲームしたいって言ってた!」
「ゲーム? 夕飯の後にやってるやつのこと?」
「そうそう。あ、桃っていうのはうちの二年生ね、バンダナじゃないほう」



ああ、桃城君か。希代と河村君の会話を聞きながら、そう思う。私の頭の中では、元気はつらつな桃城君の笑顔が浮かんだが、希代は分からないらしく「?」と首を傾げた。河村君は苦笑しながら「分かんないか」と言う。



「昨日の夜やってるの見てたらしくて、でも女子の先輩だから話しかけづらかったんだって」



確かに、ゲームをやっているのは大広間だから、人も集まりやすいし目にもとまりやすい。実際、昨日私が希代や切原君と合流した時、既に何人かが二人のゲームを見ている様子だった。集中していた二人はそれに気づいていないんだろうけど。
……ああ、ホラゲーをやっていて、希代がバグで死んで「おいちょっと待てよどういうことだよ!」と驚いた時に、後ろから笑い声が聞こえたのはそういうことか。



「桃城君なら私分かるよ。良い子だから私から誘ってみる」
「ありがとう。桃ってばやりたくてうずうずしてたみたいだから、助かるよ」



私の言葉に、河村君はふんわりとした笑みを浮かべる。隣で「私の許可は?」と聞く希代だったが、「ゲームすれば仲良くなるよ」と言う私の言葉に黙ってしまった。一理あるのか、覆せないと分かったのか。どちらにしろ、人懐っこい桃城君のことだ、希代ともすぐに仲良くなれるだろう。
「どんなゲーム好きなのかな?」「アクション系の話はよく聞くよ」と会話をしている希代と河村君には内緒で、ふふ、と笑みを浮かべた。



戻る 進む
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -