Act.26

「っくぅ〜! 自分達で作ったごはんって良いッスね!」



豆腐ハンバーグを頬張りながら笑顔で言う切原君に、幸村君が優しく笑みを浮かべながら「そうだね」と返事をする。あれから無事に昼食を作ることが出来た。豆腐ハンバーグの形はそれぞれでやった為、真田君や切原君などは形がいびつ。私の分はひとつは自分で作ったのだが、もうひとつは夏菜が作った為ハート型となってる。お茶目。



「む、美味い」



豆腐ハンバーグを口に運んでいると、真田君が私が作った味噌汁を飲んでそう言ってくれた。口に入っている状態で申し訳ないが、「あひはほー」とお礼を言う。しかし、真田君は「食いながら喋るんじゃない」と呆れた顔で言った。なんだこれ、前にも似たようなことがあったような。でも今回はお礼を言った為、強く叱れないらしい。



「これは後でデータを取らねば」
「食べてる時くらいデータ忘れろぃ」
「それは無理だな」



柳君本当に侮れん男だな。データで頭いっぱいじゃねぇか。



「そういえば城阪、何やら観月と仲が良いらしいな」
「なに……?」
「ああ、うん、気が合うみたいで。っていうか希代、その怖い顔何?」



自然と眉間に皺が寄っていたらしい、夏菜に言われて自覚する。しかし、表情は変えない。表情よりももっと大事なことが他にあるからだ。そっと箸を置き、碇ゲンドウポーズを取る私。



「その話詳しく」
「俺も聞きたいな」



気づけば幸村君も私と同じポーズを取っていた。その表情は笑みを浮かべているが、明らかに目が笑っていない。そうか、幸村君、夏菜のこと本気なんだな。よし、ちょっとだけ認めてやろう、ちょっとだけ。しかし、私と幸村君の闘志に気づかず、夏菜は「どうしたの、二人共」とおかしそうに笑う。



「仕事が同じだから話すようになっただけだよ」
「観月はそう思っておらず下心があるのかもしれない」
「幸村君怖いよ」



幸村君よ、今回ばかりは私も同感だ。夏菜は、一見優しそうに見えて「あれ? ん? この人黒い?」という人に好かれる傾向にある。観月君が「んふっ」「そんなだから負けるんですよ」と言っているのを聞いたことがあるし、観月君は腹の中が読めない。あ、そこは幸村君と共通点が。まあ、とにかく危険人物だということだ。



「それより希代はどうなの? 滝君と仲良いでしょ」
「滝君は女の子になったほうが良いと思います」



「ふう……」と溜め息にも似た息をはくと、夏菜と柳君が「詳しく」と同時に言う。柳君にいたっては食事中というのに、我慢が出来なかったのかノートとペンを構えていて、真田君に呆れられながら「食事中だぞ」と叱られていた。しかし柳君はガン無視。



「”濃い化粧似合わなそうだよね”とか、”爪の形整えて透明のマニキュア塗ったら綺麗に見えるよ”とかって言われました」
「何それ女子力高い」



パク、とハンバーグを一口食べる。その間にも「滝は顔綺麗だから言ってても違和感ないよな」「お前が言ったら気持ち悪いけどなー」と会話をする桑原君と丸井。おま、丸井、酷くないかそれは。桑原君ショック受けてるじゃんよ。



「だが滝の言葉には同意だな。御剣に濃い化粧は似合わん」
「逆に見てみたいッスけどね、濃い化粧ってやつ」
「おっおっ? 見せないぞ? 私は絶対に見せないぞ?」
「まず濃い化粧が出来るほど技術高くないじゃん」
「あ、ウッス」



夏菜の言葉がグサッと来た。……おい丸井笑うな。ギッと丸井を睨むと視線を逸らされた。



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