Act.11

家に帰ると、お母さんが夕飯の下ごしらえをしていた。鞄は部屋に置いてきたし、後は合同合宿について説明をするだけ。……なんだけど、さすがに男子テニス部の合同合宿とは言えないだろう。お母さんは過保護だし、お父さんも納得しないだろうし。



「お母さん、」
「ん?」
「夏休みに女子テニス部の合宿が一週間あるんだけど、臨時マネージャーとして行ってきて良い?」



っていっても、もう行く流れなんだけど。私の言葉に、お母さんが下ごしらえをする手を止めて私を見る。その表情はキョトンとしていて、「なんで希代が?」と聞いてきた。お母さんに嘘をついてしまうけれど、仲の良い友達に頼まれたから、と理由をつけて言う。



「まあ良いけど……、準備はしてあるの?」
「ううん、これから」
「あらー…、じゃあ早く準備しなきゃ」



「なんでもっと早く言わないの」と言うお母さんに、「ごもっともです」と返事をする。といっても、遊びに行くわけじゃないから、着替えはジャージ一式とTシャツ、下着をそれぞれ二、三枚用意すれば良いだけなんだよな。合宿所に洗濯機があるから洗濯出来るらしいし。シャンプーとか歯ブラシとかも向こうで用意されてるみたいだから、持って行かなくても大丈夫だ。……となると……、



「ゲーム、何持って行こう……」



そう、残る問題はゲームのみ。持ち運び出来るPSPや3DSは絶対に持って行くとして……、PS4は大きいし重いからどうかな……。でも今主にやってるゲームがPS4だし、持って行かないと私の気力が持つかどうか……。



「ゲームは置いて行きなさいよ?」
「え、やだよ、絶対持ってく」



私が悩んでいる姿を見て、すぐにゲームのことだと分かったのか、お母さんがそんな酷なことを言ってきた。私はすぐに首を横に振る。ゲームは私にとって命というか、生活に欠かせないものなのだ。そんなゲームを取り上げられてしまったら、いよいよ私のHPが0になる。



「アンタって子は……」



私が即答したことに呆れ、夕飯の下ごしらえを再開するお母さん。逆に私からゲームを取ったら何が残るんだい。変態しか残らないよ。




 ***




「…………」



自分の部屋に行き、制服から普段着に着替え、ゲームが置いてある私的ゲームコーナーをじっと見る。とりあえず、持って行くPSPと3DS、プレイするであろうソフト達を、自分の隣に並べて置く。で、PS4は……、……うん、どうせ荷物少ないし持ってっちゃおう! ソフトは五つくらい持って行こうかな。



〜♪



満足げにゲームコーナーを見ていると、スマホが鳴った。鉄琴の音はラインの通知音にしてある為、誰かからラインが来たようだ。スマホを手に取って見ると、それは夏菜から。



≪合宿の時、ゲーム何持ってく?≫



流石は我が愛しの夏菜、私が合宿にゲームを持って行くことなんてお見通しだ。その嬉しさに頬が自然に緩み、鼻歌を歌いながら「なんて返そうかなー」と考える。シューティングゲームとアクションゲームは持って行くのは確定している。あと私が持っているゲームといえば、ホラーゲームと乙女ゲーム。でも、流石に乙女ゲームは恥ずかしいから持って行けないな。



≪FPSとアクション系は持ってく。そういえば、前貸したホラゲークリアした?≫



そう返事をし、スマホを持って立ち上がり、部屋を出る。トントントン、と階段を降りてリビングの引き戸を開けてリビングに入る。お母さんは相変わらず下ごしらえをしていて、包丁で食べ物を切る音が台所から聞こえてくる。



〜♪
≪ホラゲー怖くてまだ全然進んでないwwww合宿の自由時間に一緒にやろう!≫



鉄琴の音が鳴ってスマホを見ると、夏菜からのライン。その文面から夏菜らしさを感じ、笑みを浮かべる。どう返事をしようか言葉を選びつつ、リモコンを手に取ってテレビの電源をつけ、机の側に座る。ソファがあるとリビングが狭くなってしまう為、家にはソファが無い。リビングにソファがある家は憧れだ。羨ましい。



≪良いよ、やろう! でもプレイするのは夏菜だからね?≫



夏菜に返事をし、テレビのチャンネルを変える。だが、この時間帯だとあまり良い番組はやっていないらしく、私は口を尖らせる。仕方ない、と録画した番組一覧を見る。録画した番組は全て一回は見た番組で、私は眠くなりながらぼんやりと録画した番組のひとつを選んだ。



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