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炭治郎にとって私は、少しわがままなくらいの女の子、だと思う。それは炭治郎が優しいからであって、今まで付き合ってきた男の子たちは私のことを「顔しか取り柄がない」だとか、「可愛げが全くない」だとか、そんな言葉で罵倒した。今まで出会ってきた人のほとんどが、私を見た目で判断して近づき、中身とのギャップに勝手に幻滅して去っていくのだ。

そんなふうに男の人に扱われ続け、あらぬ噂は流され、女の子の友達もいなくなり、私の心は荒んでいった。それでも、私のことを好きだと言ってくれる人は沢山いた。どうせこの人も私の顔しか見ていないのだと思いながらも、この人こそは私の中身を見てくれると心のどこかで信じ、何度も何度も裏切られ続けた。

そしてとうとう私の心はポッキリと折れた。私は、他の人が思うような私でいなきゃいけないのだろうか。本当の自分を心の奥底深くに閉じ込めて、人形のようにただ笑顔を振りまいていればいいのだろうか。

そう考え、本当の自分を偽りだしたとき、炭治郎と出会ったのだ。優しい炭治郎によって荒みきった心はだいぶ解された。炭治郎と一緒にいれば、今までのことは全部忘れられる。そう思ったのだ。先程の出来事が起こるまでは。


「…言いたくないなら、言わなくていい」

「……」

「ごめんな」


まただ。また謝らせてしまった。
本当は、炭治郎に私の過去を話すのが怖かったのだ。今までの人みたいに幻滅される?それとも、可哀想だと同情される?どちらも嫌だと思った。炭治郎は優しい。だからこそ、同情だとかそんな気持ちを抱きながら私と一緒にいて欲しくない。一方で、優しい炭治郎が幻滅するなんてことは無いと思いながらも、もし今までのようになってしまったらと身構える自分もいる。炭治郎とは、今のままの、お互いに何も気負うことのない関係でいたい。

けれど、いずれ私の心の準備ができたら、もっと心から炭治郎を信じられるくらいに強くなれたら、その時には聞いて欲しい。そう思っている。

「…炭治郎には、純粋な気持ちで私といて欲しいの」

「……」

「聞いて欲しいこと沢山ある、けど、私が言えるようになるまで待ってて欲しい…」

「…わかった」


それ以上何も詮索せずに、炭治郎は私の頭をぽんぽんと撫でた。


「他の人に何言われても、俺はなまえの味方だからな」


はっとした。炭治郎はいつもいつも、私の心が欲している言葉をくれるのだ。


「炭治郎は、優しすぎなの…」


炭治郎の背中に両手を回し、セーターをきゅっと掴むと、頭を撫でていた手が私の頭を胸に引き寄せる。セーターが私の涙を吸っていくのを感じながら、心地よいリズムで動く炭治郎の手のひらに神経を集中させていった。




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