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デート当日、迎えに来てくれると言った炭治郎を家で待つこと一時間。来ない。待ち合わせの時間から30分ほど経った際に届いた、「こわめんおくれ」という相当焦って送ったであろうメッセージが何かあったことを物語ってはいたが、さすがにこんなに遅れるとなると心配になる。

電話をしてみた方がいいのだろうか。そう思い、携帯をバッグのポケットから取り出し、メッセージアプリを起動する。
呼び出し音が数回なるが一向に出る様子はなく、丁度切ろうとした時に「本当に申し訳ない!!」という大きめの声が私の耳に響き渡った。


「なんで謝ってるの」

「こんなに遅れて、何も言わずにすまなかった。六太が熱を出してしまったんだ、朝食を戻してしまったから、今病院に来てるんだけど…」

「…」


そういう事だったら、今日は行けないって連絡してくれればよかったのに。きっと今も、電話ができるスペースをわざわざ探して電話に出てくれたから、出るまでに時間がかかってしまったのだろう。


「今日は、やめよ」

「えっ」

「弟と一緒にいてあげて」


じゃあね。そう言って、焦っているような炭治郎の声を遮るように電話を切ってしまった。こうでもしないときっと炭治郎は遅くなっても行くと言って聞かないだろうし、いくら禰豆子ちゃんも面倒を見られるといってもひとりじゃ大変だろう。

それにしても、ちょっと嫌な言い方、しちゃったかも。自己嫌悪に襲われ、大きめなため息が出る。こんなんじゃ、今までの人みたく、愛想つかされてもおかしくない。

謝ろうと考えて、コンビニへ行き、六太くんが好きそうなお菓子とゼリーやプリンなどをカゴに入れ、会計をした。一度家に帰り、メモ帳を引っ張り出して「今日はごめんね。ゼリーとプリン、六太くんに食べさせてあげて。体調が良くなってきたら、お菓子も入ってるからほかの子たちも一緒に食べてね。 なまえ」と書いて、コンビニの袋に忍ばせた。


ーーー


先程買ったもの達を届けようと歩いていると、丁度炭治郎の家が見えてきた時、向こう側から誰かが歩いてくるのが見えた。


「…炭治郎?」


目を凝らして見てみると、やはり炭治郎だ。背中には六太くんがおぶさっているのが見える。
すると向こうも私に気づいたようで、手を振りながら走り出した。


「ちょっと!六太くん具合悪いのに走らないでよ!」


焦って叫ぶと、思い出したように足を緩めたが、眠っていた六太くんが目を覚ましてしまったようだった。急いで駆け寄り、炭治郎に袋を押し付ける。


「…これ、六太くんに」

「わざわざ買ってきてくれたのか?ありがとう」

「あとさっき、…冷たい言い方になっちゃった気がして、ごめんなさい」

「なまえが謝ることは何もない!謝るのは俺の方だ、約束をしていたのに本当にごめん」


そう言って貰えて、心の底から安心した。


「ううん、早く治ると、いいね」

「ありがとう!」

「…兄ちゃん、このひと誰?」


そうだ、六太くんが起きてしまっていたんだった。ふと聞こえた声に私は驚いて何も言えず、どうしようかと思ったが、私より先に炭治郎が口を開いた。


「兄ちゃんの大事な人だよ。六太のために色々買ってきてくれたんだ。お礼言えるか?」

「え、」

「うん、ありがとう!」


大事な人。今まで私のことをそんなふうに言ってくれる人はいなかった。嬉しくて、心がじんわりと暖かくなる。


「どういたしまして」


笑顔で答えると、六太くんが嬉しそうに笑った。


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