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槿花一日。






06


少し手間取ってしまい戻るのが遅くなった。ちょっと悪いことしたかと船が見えるとこにまで戻ると戻るべき船の上でうろうろし続ける変質者のような奴がいた。


「……何してんの。」


こいつに何度呆れたらいいのだろうか、と思いつつ軽くため息をつきながら声をかける。すると言い終わるより早く奴は振り返った。


「マコちゃぁぁぁあん!!中々戻って来ないから心配したよぉぉぉぉ!!」


飛び付いて来そうな勢いに若干引きながら船に乗る。「悪かった遅くなった。」と言えば、返事は無く、そんなに悪いことしたかと振り向けば、信じられないような物を見る目と目があった。


「………何??ごめんって、」


ヤバい、もしかしたら怒らせたかと再度謝ろうとした途中でツカツカと歩み寄って来られた。思わず仰け反りながら顔色を伺うが真顔以外の何物でもない。訳の分からぬまま、視界の下の端の方で奴の手が動いた。まさかと思うも反射で歯を食い縛る。しかし、次の瞬間、顔に近づいて来た奴の手は、顔を包むように触れただけだった。


「………………え??」


何がどうしてこうなったのか。いつも五月蝿い癖に眉毛野郎こういう時に限って何で何も喋らないのか。というか良く良く考えたらこいつが殴りかかってくるとかないだろうに何で歯を食い縛ったんだろう。勘違いというか早とちりにも程がある恥ずかしくなってきた。あ、顔熱くなってきた。というかこの体制ってなに顔に手を添えられてるっていったらいいの何なの。あれ、もしかして今、顔に手を添えられて恥ずかしがってるように見えなくもないんじゃないかあれ、


「違うからな!!恥ずかしがってるんじゃない!!」

「………………何が??」


また勘違いされて叫ばれても嫌だと先に否定したのにきょとんと首を傾げられてしまった。また先走ったらしい。


「え、あ、いや、何でもない。」


若干気まずく思えて視線を逸らしつつ手をはね除けた。しかし、何故かは分からないが変わらず視線をこちらに向けられたままで居心地が悪く、眉間にシワを寄せた。


「……マコちゃん何かあったの??」

「は??」


きょとんとしていた眉毛野郎が険しい顔になる。意味が分からずに聞き返す。


「ここ。痣出来てる。」


「別れる前にはなかったよね??」と先程と同じように顔に手を添えてくる。ああ、これが気になったのかと納得が行くと同時にやっぱり顔に手を添える必要は無いのではないかと思い、もう一度手をはね除けた。


「だから何??」


心当たりはあるがそれがなんだというのか。あんたには関係ないだろうと言うように睨み付ける。


「安静にって言われなかったっけ??」

「別に大暴れした訳でなし、傷も開いてない。問題無い。」


不満気に言い返して来られたので若干ムッとして更に言い返すと話を終わらせるように船室に向かおうとする。


「俺は、心配して、」

「不要だ。」


あからさまに眉根を寄せて言う彼に苛立ちながら端的に言い返す。船室に向かう私の後ろを顔色を伺うようについてくるもんだから、私が船室に入るや否や拒絶するように扉を閉めた。



Ж




どうしてこうなるのか。目の前で閉められた扉を前に何も出来ず数瞬立ち尽くすと、とりあえずバラティエに向かって船を出すことにした。ただ笑って欲しいだけだというのにどうにもうまくいかない。と言うより何故怒らせてしまうのかも分からないし何を怒っているのかすら分からないのだ。


「気難しいなんてレベルじゃないですよレディ。」


舵を取りつつ一人呟いた言葉はタバコの煙と共に何処かへ吹き飛んでった。



Ж




何だか妙に暖かいな、心地良いけどと感じた。意識が浮上したはいいけどまだ眠い。折角暖かいのだしもう少し寝ようかと、寝返りをうつ。右の脇腹が痛いから左を向こうとした時、何かに足が当たった。


「ん……??」


壁にでも当たったかとうっすら目を開く。すると壁があるのかと思いきや、男性の胸元が視界に飛び込んできた。ぎょっとしつつも最小限の動きで自分の状況を把握しようと努める。どうやら、誰かに抱き締められるようにして寝ていたらしい。そりゃあ暖かい筈だむしろ何故確認するまで気がつかなかったのかと自分に少し呆れつつ、


「何してやがる!!」


そう叫びながらベッドに居た男、眉毛野郎をベッドから蹴落とした。うっかり右足て蹴ったからちょっと痛かった。


「っだ!?」


突然蹴落とされた眉毛野郎は打ったらしい頭を擦りながら起き上がるとこちらを見て、


「おはようございます、昨夜は良く眠れましたか??レディ??」


と微笑む。妙にイラッとしてもう一発蹴ってやろうかと起き上がってベッドの上で膝立ちになる。そのままベッドから降りるつもりが左側に体重を掛けすぎたのか、スプリングが弾んで右側によろけた。


「危ねぇ!?」


眉毛野郎がそれに予想外に早く反応し、ベッドに倒れ込む前に抱き留められた。その瞬間に膝を腹に入れてやろうとしたが、あっさり止められてしまう。


「ったく、頼むから安静にしといてくださいよ。」


膝蹴りを止めた手をそのまま膝裏に回した眉毛野郎に姫抱きの要領で軽々と持ち上げられ、ベッドに寝かされた。


「思うように動けなくてフラストレーション貯まるのかもしれないけど、もう少しの間だけ安静にしててくれよ。な??周りに当たり散らすのは止してくれ。」


そう言うと眉毛野郎は、「まだ早いからもう少しお休みください。」と、布団をかけてきて、挙げ句小さい子をあやしているつもりなのか、ぽんぽんと二度頭を軽く撫でて行った。
眉毛野郎が出ていった扉を眺めてから、ふとそう言えば何で同じベッドで寝てるんだと問い詰めるつもりだったんじゃないかと思い出す。


「……逃げたか。」


まんまと逃げられた苛立ちとあっさり膝蹴りを止められた苛立ち等々。とにかく次部屋に来たら問答無用でぶん殴ろう、と心に決めた。



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