槿花一日。






18


朝、いつものようにダイニングにやって来ると、


「サンジめーーしーー!!」

「今用意してんのが見えねぇのかクソゴム!!」


いつも通りの風景と、もうひとつ。


「紅茶とコーヒーどちらがいいですかハニー??」


サンジの席に我が物顔で座る、白いポンチョ。


「ん、紅茶。ミルク。」

「で、甘くしとくんだろ??」

「そう。」


あまりにナチュラルにそこに居るんだが、


「いや、なんでナチュラルにお前いるんだよ。」


ここはウソップ様が突っ込んでやらなければ。


「あれ!?なんでちびポンチョが居るんだ??」

「今気付いたのかよ。」

「麦藁くん、今一体なんて言った??」


ビシィと綺麗な俺様のツッコミが入ると同時にちびというワードに反応してマコが椅子を倒す勢いで立ち上がる。


「おい、お前ら大人しくしねぇと飯抜くぞ。」

「「いえっさー。」」


そこにやって来たサンジの一言で一瞬で俺とルフィが席に着いて、マコも渋々座る。


「勿論マコにはあげるからねー!!毟ろクソ野郎共の分やるよー!!」


クネクネとハートを撒き散らしながらサンジは配膳しつつ叫ぶ。それを見たマコは顔をうざったそうに歪め、


「なんだとサンジ!!それはダメだ!!」


ルフィはそう反論する。


「わぁってるよ。マコは1人前以上に食えないしな。」

「そういう問題かサンジくん。」


仕方ないと言うサンジに、おいおいと物申す。


「とにかく、元気になってよかったなお前!!」


そこにチョッパーが机に乗り出してきて、マコを見ると嬉しそうにニコニコ笑ってそう言った。


「あぁ、うん。ありがと。」

「お、御礼とか言われても嬉しくないんだからなコノヤロー!!」


更に笑ってチョッパーが小躍りしながら自分の席に着いたのを見てマコはくすりと笑った。


「それでだ、なんでお前が居るんだっつの。」


流されない内に再び同じ質問を投げ掛けると、彼女はパチクリ目をしばたかせてから、


「あんたとこの船長と喧嘩しに来たんだけど。」


今更何をと言わんばかりに首を傾げた。


「あぁ、」


そういやそんなことを言っていたな、と納得するそぶりをしていると、ナミとロビンがやって来て、ナミはマコを見掛けるや否や抱き着きに行って。


「あぁ、やっぱり抱き心地良いわねぇ。」


と、ほお擦り。マコが助けろと言うような視線を向けて来たが目を逸らしておいた。


「マコー!!ナミすぁーん!!ロビンちゅあーん!!クソうめぇ朝ごはん出来たよー!!」


サンジが小躍りしながら皿を並べていき、若干名のイレギュラーを除いたいつも通りの食卓になる。ちなみにイレギュラーな彼女はサンジの膝の上で不服そうだ。


「んじゃあ、食い終わってすぐでいいか??」


朝っぱらから肉にかぶりつきながらルフィは言う。


「食後すぐ??ヤダ吐く。」

「わがままな奴だなぁ。じゃあ30分くらいか??」

「いや、なんか訳わかんないんだけど1時間ってことで。」


今から決闘しようってのにいやにノリが軽すぎやしないかと思わなくもないんだが、重い空気のノリも勘弁だからまぁ、よしとしておくか。
何はともあれ、今日の朝飯も旨かった。ごちそうさま。



Ж




「いよぅし、やるか。」

「そだね。」


麦藁くんがそう言い、ひょいと甲板から飛び降りる。それに続き、着地すると念のため手首をコキコキと鳴らす。


「ぜってぇ勝って仲間にしてやるからな。」


ニカっと、今から決闘だってのにその雰囲気にそぐわない笑顔を見せた彼を一瞥して、ポンチョのフードを被った。


「………来なよ。」


ぽつりと言って、手招きすれば、


「おし、行くぞ!!ゴムゴムの………、」


グンと、彼の拳が後ろに伸びて行く。


「一個、あんた多分忘れてるよね。」


それを、敢えて受けるべく、拳の伸びるであろう直線上を麦藁くんに向かって駆け出した。


「銃!!」


飛んで来た拳に手の平を向ける。至近距離に関わらず、それはポスンと音を立てて勢いを無くした。


「あんたの攻撃は私に効かないってこと。」


止まった拳を見て、彼は、


「それはお互い様じゃねぇか??」


とだからどうしたと言わんばかりの顔をする。


「まぁ、ねぇ。」


ゆっくりお互い手を引いて、それから次に動いたのは私だった。両手の指を絡め両腕を束ねてロープを伸ばす。普段片腕だけをロープに変えるよりも太いロープを麦藁くん目掛けて振るった。


「ってこた、こうするしかないよね、っと!!」


ぐるんぐるんと彼を縛り上げる。下手に伸びたりされては敵わないので手の甲もしっかり押さえた。慌てて抜け出すべくもがく麦藁くん。


「き、緊縛プレイだと!?マコにはまだ早「黙れ万年発情期。」


甲板から聞こえた叫びに淡々と言い返しつつ両腕を振り上げる。


「ぬぉぁぁあ!?」

「大体、」


そこから繋がるロープに引っ張られ麦藁くんの足が地面から離れた。


「私に早いならあんたにはもっと早いだろうがぁぁ!!」


そう、決闘とは全く関連のないことを叫びながら海に向かって麦藁くんをぶん投げた。


「二倍縄・一本釣り<アッドピアーレカナポ・ペスカ>!!」


丁度彼等の船、サニー号と言ったか、の船首の方に投げたはいい。手ばかり気にして、忘れてた。


「あぶねっ!!」


ビョンと足が伸びて船首に巻き付いて、麦藁くんは海に落下する前に止まってしまった。顎に手を宛てて、ならどうしようかと考えていると、ガシっと肩が捕らえられる。長い長いその足は考えるまでもなく麦藁くんのもので、顔を上げるとニヤリと笑っていた。


「ゴムゴムの………、」


船首を掴み支点として、彼は先程の私と同じく相手を海に落とす気なのか足を振り上げた。


「槌ぃ!!!!」






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