槿花一日。








「なんだと!」
「あぁ!?」

とお嬢様とロロノア様が何やら言い合う声が室内から聞こえてきた。とは言え、最近よくある軽い言い争いのようで、お部屋にお茶をお持ちする分には何の支障もないだろうと聞き耳を立てて判断すると静かに部屋の扉をノックした。


「失礼いたします。お茶をお持ち致しました。」


扉を開ければ、二組の目がバッとこちらを向いた。特にロロノア様がこちらを値踏みするようにじろじろとご覧になってくるのですが一々動揺していても仕方がないので何食わぬ顔でサイドテーブルにティーセットを置いて準備をし始める。


「確かに気配がないのは認めるがそれとこれとは話が、」
「私の執事だぞ!お前よりもずっと強いに決まってるだろ!」
「勝手に決めつけんな!」
「いーや!絶対ラチェレの方が強い!何たって私の執事だからな!」
「執事じゃなくてただ羊の着ぐるみかぶったおっさんだろうが!」


どうやら言い争いの種はわたくしメェとロロノア様のどちらが強いからしい。


「ひとまずお二人ともお茶の準備が出来ましたので一度落ち着かれては如何かと。」


言い争い続ける二人にそう話しかけると、ぴたりと話を止め少し不本意そうながらもいそいそとこちらへやって来てくださったので、お嬢様の分の椅子を引いて待機する。


「おう、ヒツジ。」
「執事でございます。」

ロロノア様が雑に椅子に座りながら、声をかけていらっしゃるのでお嬢様の椅子を押してから彼に向き直った。


「後でちょっと手合わせしろよ。」
「いえ、わたくしメェは緊急時以外には剣を抜くことはございませんので。」


とご容赦頂きたい意を込めてお辞儀をしようとすれば、お嬢様の手に制された。


「ラチェレ、」
「何でしょうか、お嬢様。」
「このあんぽんたん一旦黙らせろ。お前が馬鹿にされるのは心外だ。」


と、紅茶を飲みながらロロノア様をさすお嬢様。


「お嬢様。人を指さしては、」
「いいから!」
「………畏まりました。御用メェとあらば。」





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