10杯目 健くんは2週間もわたしのバイト先に来なかった。 こんなの初めてで、心の奥がずっとモヤモヤしてる。 親友にも、ため息ばっかりついてうざいわよって言われちゃったし。 ねえ、これが好きってことなの? はあ、とまたため息をつく。親友がこの場にいたら、きっと思いっきり頭をはたかれるんだろうなあ。 行き場のない思いをずっと抱えたままにしときたくなかったし、告白した方が得かな、とか思ったり。 ふふ、と少し笑って、今日も今日とてバイトのわたしは午後8時になるのを待つ。 あー、もう早く来い!! 「菜摘ちゃん、こんばんは」 不意に聞こえた、彼の声。 まだ8時にはなってないのに。 こ、心の準備がっ。 「健くん」 「ミルクティーください」 最初の頃と変わらず、健くんはにっこりと笑ってオーダーする。 「はい、どうぞ」 わたしは今日はミルクティーを準備してた。 これが、わたしの特別の気持ちなんだよ。 健くんは驚いた表情を浮かべた後、嬉しそうに笑った。 キュンと心が苦しくなる。 こんなにも好きになってた。 苦しいくらいに。 「健くん、わたし……」 「ねぇ、俺のこと好きになった?」 わたしの言葉を遮ってそう言った彼は、わたしにそっと優しくキスをした。 back |