8杯目 バイトの後に、健くんと帰るのがすっかり日課となってしまった今日この頃。 最初の内はユーリさんもからかってきたけど、最近はそんな事もなく恥ずかしい思いも何もしなくなった。 たまに、ユーリさんには付き合ってるの? って聞かれるけど、そういうわけでもないんだよね。 今日も例に違わず、健くんと帰っていた。 もうマフラーもいらない季節。逆に少し暑さを感じるくらいの季節になった。 最近わかったことなんだけど、健くんは女の子の扱いに慣れてる気がする。 さり気なく車道側歩いてくれてるし、わたしに合わせて歩いてくれる。 それに、こういう返事が欲しい時に欲しい返事をくれる。 「ねぇ、ちょっとここ寄ってもいい?」 そう言って健くんが指差したのは、バイト先から駅までの間にある公園。 「うん」 健くんがブランコに座ったので、わたしはその隣のブランコに座る。 しばらくただ漕いでただけだったけど、健くんが漕ぐのを止めて、緊張した面もちで口を開いた。 「俺……さ、菜摘ちゃんの事好きなんだ」 それはさすがに何となく気づいてた。 正直普通に嬉しい。 「付き合って、くれる?」 不安げに瞳を揺らす健くんはすごく可愛い。 付き合ってもいいかな、て思うんだけど…… だけど…… 「ありがと。……でもごめん。わたしまだ……」 健くんのことどう思ってるのかわかんない。 いい人だってわかってるから、中途半端な気持ちで付き合いたくない。 「そっか……。ん、でもまだ、俺可能性あるんだよね?」 一瞬悲しそうな顔をした健くんだったけど、すぐにニヤリと子供っぼい表情を見せた。 back |