今白ひげ海賊団は宴の真っ最中だ。というのも偶然(だとすれば出来すぎた話しだよぃ)二番隊隊長であるエースの弟のモンキー・D・ルフィが率いる麦藁海賊団とこの広大なグランドラインで出くわしたのだ。
普通は他の海賊船と鉢合わせしたら争いが起こる。だが、たまたまこちらには兄が、向こうには弟が乗っていて、しかも数年ぶりの再会となればそんな無粋な真似をするはずもなく直ぐに親父の号令で宴が始まった。
最初は格上の海賊団に対して萎縮していた麦藁たちも宴も三日目となれば慣れたもので、料理人は料理人同士、剣士は剣士同士と同じ職に付く者たちと情報交換をしたり手合わせをしたりと各々好きに宴を楽しんでいる。
件の弟はと言えば、初日に見せてやった不死鳥の姿をえらく気に入り、俺の側を離れようとしない。それをブラコン兄貴が良く思うはずもなく、日が経つにつれ目つきが険しくなっていった。

***

ルフィが親父に呼ばれて俺の側を離れた途端、「あのな、マルコ」と傍らに座るエースが半分据わった眼で話しかけてきた。
なんだよぃ、と気のない返事をすると少しカンに障ったのか「ちゃんと聞けよ!」と強引に自分の方へと振り向かせた。面倒臭ぇなと思いながらも、もう一度同じ言葉を繰り返した。

「だから、なんだよぃ?」

「俺なー……ルフィが好きなんだ」

「いまさら言われなくても知ってるよぃ……」

こいつの度を越したブラコンぶりはもう周知の事実だ。常に手配書を持ち歩いて「見てくれ!!こいつは俺の弟なんだ!!!」と誰彼構わず見せびらかす。酒に酔ったら弟との思い出話を語りはじめるし、更に酔いが回れば「ルフィー!!愛してるぞー!!!早くここまで来ーい!!いや、むしろ俺が行く!!」と甲板から飛び降りようとしたりと迷惑窮まりない愛を常々垂れ流しているのだ。
いまさら宣言されなくても十分過ぎるほどに理解している。

「でもなー、ルフィの一番は俺じゃねぇーの」

「あん?言ってる意味がわかんねぇよぃ」

このブラコン兄貴までとはいかないが、弟の方もなかなかのブラコンぶりを発揮している。
俺の側を離れようとしないとは言っても、好奇心旺盛な弟君は何か面白いもの(例えばジョズの怪力ショーとか)を見るとすぐそちらに混ざりに行き、満足すると俺の隣に座る。そして口を開けば「あー楽しいなー!!あ、エース何処だ?」である。
ちょっと人に懐いたかと思えばすぐこれだ。全く似た者兄弟だ。

「あの子の1番は間違いなくお前だろぃ」

「あいつの一番は俺じゃなくて冒険。次が仲間でその次ぐらいが俺なんだよなー、多分」

「別にいいじゃないかよぃ。仲間の次に思ってもらえるなんて上々だろぃ?」

「まあなー!あいつのカテゴライズは冒険、仲間、その他しかねぇからなー!!」

「そうだろう?何も問題ねぇじゃねぇかよぃ」

「冒険が1番なのは仕方ねぇ。あいつは昔からそうさ。仲間が2番なのもいいさ。俺だって仲間とルフィじゃ選べねぇ。……問題はその他のカテゴリーなんだよ、マルコ」

手に持っていたジョッキを一気に飲み干すと、エースは俺に向かってそのジョッキを突き付けてきた。

「“その他”のカテゴリーの1番は“俺”じゃなきゃならねぇの!!」

「そうかよぃ……」

余りのブラコンっぷりに俺は目眩がしてきた。確かにあの弟は可愛い。男に懐かれるなんて普通は気色悪くて仕方がないが、何故か悪い気がしなかった。それどころか、少し嬉しく感じてしまったのは確かだ。
……まぁ、あの弟ならブラコンになるのも分からなくはない、か。

「でもルフィは気まぐれってか、あの通り好奇心旺盛だろ?だからあいつの気を引くために俺はいつも必死さ」

いや、それにしても度を超してるよぃ。

「たまに俺さ、あいつの手足切り落としてやろうかと思うんだ。そしたら俺だけを見て、俺から離れて行かないような気がして」

「お前……発想が怖ぇよぃ」

「でもわかってんだー。そんなことしてもルフィは行きたいとこに行くしやりたいことをやる。そんなルフィだから俺は好きなんだ」

「そうかよぃ……」

「だから俺は、他人が1番にならないようにいっつも気を配ってた。……なのに、それを邪魔するかもしれない奴が現れやがった」

そう言うと俺のほうをジロリと睨みつける。俺はその視線の強さに思わず佇まいを直すが、同時に負けじと同じ強さの視線を返す。

「……ルフィが、ルフィがそいつを選んだら、どうするつもりだよぃ?」

「決まってんだろ?」

みなまで言わすなよ、と言う風にニヤリと笑う。話は終わりとばかりに立ち上がるとサッチと共に変な踊りをしているルフィの元へ歩きだす。
その途中で俺の方へ振り向くと思い出したように付け加えた。

「俺な、マルコ。さっき言ったことルフィには出来なくてもルフィ以外には出来るぜ?」



牽制
「つまんねぇ牽制かけてくるんじゃねぇよぃ」
「いや、九割本気」
「………負けねぇよぃ」




………
兄ちゃんはすげぇ嫉妬深いといい







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