「おれは海賊王になるんだ!」

出会ったときからずっと口癖のように言っているこの台詞。
最初は笑い飛ばして「お前には無理だ」と突き放していた。
その度に「無理じゃねぇ!なるったらなるんだ!!」とむきになって突っ掛かってくるのが馬鹿らしくて、言葉を与えずに海へ蹴り落としていた。

『ぎゃぁぁああ!助けてぐれぇっ!おでっ!泳げねぇ!!』

『ほらみろ!泳げねぇ奴が海賊王になんかなれるもんか!!』

『泳げなぐでも!おれは!海賊王になるんだ!!』

能力者は海に嫌われる。このまま放っておいたら死んでしまうだろう。
一言諦めると言えばすぐに助けてやるのに、この馬鹿な弟は力尽きて海に沈んでも、決してそんなことは言わない。
結局、いつも沈んでいく弟を見捨てることができずに手遅れになる前に海へ飛び込むことになる。



***



『……っ!げほ、がはっ!!』

海水をたらふく飲み込み膨らんだ腹を思いきり踏み付けてやれば、鯨の潮吹きのように勢いよく吐き出す。そのまま力をかけ続ければみるみるうちに腹はへこみ、元の姿に戻る。
海水を吐ききって咳込んでいる様子を見て、ちゃんと呼吸しているのを確認して、おれは漸く安堵する。
こうなるとわかってるくせに毎日のように海に落とし続けるのは何故なんだろう。
おれは何故あいつを、ルフィを、見殺しに出来ないんだろう。
おれが海賊王の息子だと知っていて、尚あの言葉を吐き続ける出来の悪い弟。

悪意なく、純粋に海賊王に憧れているから、
それだけじゃない。
多分、これは



惚れた弱み






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