「おい」
「……」
「麦藁」
「………」
返事がない。いつもなら一回声をかけただけで、まるで犬が尻尾を振るように「なんだ!何か用か?」と付き纏うというのに。
クロコダイルは大きな溜息を吐いた。
「何を拗ねていやがる」
「………拗ねてねぇ」
ルフィはぷいっと顔を背けながら言った。その仕種は本当に子供のようである。
クロコダイルはもう一度溜息を吐くとルフィを強引に己の方へ向かせた。
「ガキじゃねぇんだから言いたいことがあるならちゃんと言え」
右手でルフィの顔を固定して自分から逃げられないようにする。じっと見つめているとルフィはしばらく視線をさ迷わせたあと、唇をぐっと噛み締めると瞳からポロポロと涙を零しながらクロコダイルに食ってかかった。
「…………ワニのばかっ!」
「あ?」
「ワニのばか、ばか、ばかぁっ!……っ、ひっ、う、浮気なんか、すんな、よぉっ!ばか……っ」
「待て、なんの話だ?」
滅多に見ないルフィの涙と身に覚えのない疑惑にうろたえながらも、それを決して表には出さず冷静に問いただした。
「しらばっくれるなよ!お、おれ、知ってるんだ、かんな!先週!女の人と、ホ、ホテルに入ったって!!……うぅっ、ふぇ、え、えっち、したんだろ!?」
ルフィの言葉に記憶の糸を辿る。そして、一つの答えが見つかった。
「ルフィ」
「な、なんだよ!」
「そいつは取引先の女社長だ。内密の話があったからホテルを使った、それだけだ」
「う、嘘つくなよ!ローが言ってたぞ!大人の男と女がホテルに入ったら、す、することは、一つしかねぇって!」
「確かに誘われはしたな」
「っ!!や、やっぱり、えっちしたんだ…!!」
涙の量をさらに増やしながら言い募った。クロコダイルはまた溜息をつくとルフィの足を払う。
ごちんとやや痛そうな音がした。
「〜〜〜っ!!!……なにすんだワニ!!」
痛みに床の上で悶えながらクロコダイルを睨みつける。その瞳からは先程とは違う意味の涙が零れた。
「確かに誘わたし、それに乗ろうとも考えたな。だが不本意な事に今の俺はお前じゃねぇと勃たねぇらしい」
クロコダイルはルフィの質問には答えずに淡々と語る。
「だいたい、てめぇが今回のテストを落とすとマズイって言うから一月の間我慢してたんだ。漸くテストが終わったと思ったら俺が浮気しただと?良い度胸じゃねぇか。この際、俺がどれだけ溜まってたか、不本意ながらもてめぇを愛してるか、その身を持って味わいやがれ」
そう言い切ると床に転がったままのルフィに覆いかぶさった。
「ほ、本当にえっちしてないんだな!?」
「一ヶ月分の濃さを味わせてやるよ」
「……言い方が親父臭ぇぞ」
「うるせぇ」
それ以上は言葉はいらないと二人は唇を重ね合わせた。
…………
デレ鰐×デレルフィは正義っ
ちなみに女社長はミス・ダブルフィンガーです。