旅人の証


それは、サイショーの国を出る1日前のこと。僕は嬉しくて、でも少し恥ずかしくて。大賢者さんは、照れながら笑ってた。

さらに一日前。

「一つあなたについて知りたいのですが、」

その日の晩御飯のとげシチューを頬張っていたら、大賢者さんがこちらをじろじろ見ながらそう言うものだから、下着の色でも訊かれると思ったけど違った。

「あなたは好きな色がありますか?」
「色?」

そういえば僕には好きな色がなかった。人間でなくなり、魔力を手に入れてから色なんて長い間意識しなかったから…

「今はまだよくわからないです。」
「そうですか。まだ新しい生活に慣れていないようですからね。」

大賢者さんは優しく微笑み、明るいおばちゃんに声をかけて、店の奥で何か話していた。

翌日、僕らは国境の山を越えることにして、荷物を整頓していた。

「あらやだ、間に合わなかった?!」

宿屋のロビーにおばちゃんが来た。

「まだ時間がありますから大丈夫ですよ」と大賢者さんは言う。
「お弟子さん、これ羽織ってみて!」

僕は手渡された布を見て、これが何かとすぐにわかった。白地に水色のローブ!

「ありがとうございます。」

早速羽織ってみると、少し大きい。

「アンタ若いんだからすぐピッタリになるよ!」と、おばちゃんは今日も陽気。


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